ジェネレーションギャップに起因する労働紛争

ジェネレーションギャップに起因する労働紛争

<セクハラのギャップ>

昭和の感覚では、男性が女性の前で性的な話をすることや、男性の女性に対する軽いボディータッチは、職場の潤滑油であり必要なコミュニケーションの一種でした。

行き過ぎた言動は問題視されるのですが、いつも加害者が男性で、被害者が女性でした。

男性が被害者となって交番に駆け込んでも相手にされませんでしたし、同性間でのセクハラなど想定外でした。

令和の感覚では、顔や身体をジロジロ見ることは、異性間だけでなく、同性間でもセクハラとなります。

性的なことを連想させる言葉を使ったり、性的な意味を持ちうる動作を行ったりすれば、敏感にセクハラであると感じ取ります。

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賞与の意図的な減額

賞与の意図的な減額

<法令の規定>

労働基準法は、使用者に賞与の支払を義務づけてはいません。

しかし、支給することがある場合には、重要な労働条件の一つとして明示することを義務づけています。〔労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条〕

また、パートタイム労働者や有期雇用労働者を採用する場合で、正社員などフルタイムの無期雇用労働者とは異なる基準や計算方法で賞与を決定している場合、あるいは賞与支給の有無に違いがある場合には、その違いの内容と理由を説明しなければなりません。〔パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項〕

「賞与の支給額は、会社の裁量で自由に決定できる」と言われることがあります。

しかし、これは不正確な表現であって、正確には「賞与支給の有無や、支給する場合の支給額の決定方法を自由に定めることができる」ということになります。

そして就業規則のある会社では、就業規則、賃金規程、賞与支給規程などに関連規定が置かれることになります。

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能力不足社員・問題社員の給与減額

能力不足社員・問題社員の給与減額

<法令や判例の動向>

能力不足や問題社員であることを理由に、社員の給与を減額することについては、労働基準法や労働契約法などの労働法に規定がありません。

また、どのような場合に、どの程度まで給与の減額が許されるかという基準を示した判例もありません。

ただ、会社側が行った給与減額が不当であるとして、社員側が会社側に損害賠償を請求する民事訴訟を提起した場合には、個別の事案に則した判決が下されることになります。

この場合には、客観的に合理的な根拠を欠く減額により実際に支給された給与額と、あるべき給与額との差額が損害額として認定され、社員への支払命令が会社に下されることとなります。

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協会けんぽの各種申請書類様式変更(令和5年1月)

協会けんぽの各種申請書類様式変更(令和5年1月)

<様式変更>

協会けんぽより、各種申請書類の新様式が公表されています。

令和5(2023)年1月以降に、旧様式で申請すると、事務処理等に時間がかかることがあるため、協会けんぽは注意を呼びかけています。

変更の理由は、より分かりやすくすること、より記入しやすくすること、より迅速に給付金を支払うこと等を目的としています。

文字の読み取り精度を高め、より迅速に事務処理を行うため、マス目化した記入欄が増えています。

わかりやすい記入方法とするため、一部の記入欄は、記述式から選択式になりました。

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ジョブ・カードの電子化

ジョブ・カードの電子化

<マイジョブ・カード>

令和4(2022)年10月26日、厚生労働省が、ジョブ・カードのデジタル化に向けて、新たなウェブサイト「マイジョブ・カード」を公開しました。

ジョブ・カードは、個人のキャリアプランや職務経歴を記録し、求職活動や能力開発に役立てるもので、これまで、紙または電子媒体で作成・保存することができました。

今回公開されたウェブサイトでは、オンライン上でジョブ・カードを作成・管理ができるようになりました。

また、マイナポータルからシングルサインオンできるほか、ハローワークインターネットサービスやjob tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))と連携し、登録情報の活用や、職業情報やキャリア形成に役立つ情報取得ができるようになりました。

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労働者性が認められるタイプのフリーランス

労働者性が認められるタイプのフリーランス

<フリーランスの定義>

フリーランス(freelance)のフリー(free)は自由を意味し、ランス(lance)は槍を意味します。

中世のイタリアやフランスの傭兵部隊のシステムがイングランドに伝わり、傭兵がフリーランス(自由な槍)と呼ばれるようになったとされています。

特定の君主に仕えるのではなく、戦う理由と報酬に納得できれば、戦いに望む立場の人たちがフリーランスの語源です。

現代の日本でも、フリーランスという言葉が使われています。

しかし、これは法令上の用語ではないので、明確な定義がありません。

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レジリエンス

レジリエンス

<レジリエンスという言葉>

物理学で、ストレス(stress)は「外力による歪み」を意味し、レジリエンス(resilience)は「外力による歪み」を「跳ね返す力」を意味します。

どちらも心理学の世界に入ってきて、レジリエンスは「極度に不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」などと定義されています。

単純に考えれば、ストレスを跳ね返す力ということになります。

<レジリエンスの個人差>

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遅刻を繰り返す社員の解雇がむずかしい理由

遅刻を繰り返す社員の解雇がむずかしい理由

<理由による対応の違い>

遅刻の理由を確認することなく叱責したり、懲戒を検討したりは以ての外です。

ましてや、解雇を通告すれば不当解雇となります。

家庭内のプライベートな事情や、交通機関の遅れなど、本人に責任を問えない理由で遅刻した場合には、責めることができません。

反対に、深夜まで深酒したり、オンラインゲームに熱中したりで、明け方から眠りについて寝坊したのが遅刻の理由であれば、言い逃れができません。

現実には、このような極端なケースではなく、本人の帰責性について判断に迷う理由も多いものです。

プライバシーの侵害とならない範囲で、なるべく具体的な理由を確認し、本人の責任の程度と再発防止策検討の資料とします。

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予備的普通解雇という手法

予備的普通解雇という手法

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇であれ、懲戒解雇であれ、すべての解雇は、この制限を受けることになります。

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能力不足を理由とする解雇が不当解雇とならないために

能力不足を理由とする解雇が不当解雇とならないために

<不当解雇の一般的な基準>

労働契約法には、解雇が無効となる一般的な基準が次のように示されています。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

この条文自体は、表現が簡潔で抽象的なため、これだけを読むと解釈の幅が広いものとなります。

しかし、労働契約法は判例法理をまとめたものです。

ですから、実務的には、数多くの判例や裁判例を参照して、具体的な事例に当てはめて、解雇権の濫用となるのか、不当解雇となるのかを判断することになります。

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