同一労働同一賃金と正社員登用制度

同一労働同一賃金と正社員登用制度

<2つの最高裁判決>

令和2(2020)年10月13日、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件の最高裁判決が出されました。

大阪医科薬科大学事件ではアルバイト職員の賞与が、メトロコマース事件では契約社員の退職金が争われ、どちらも原告に支給する必要は無いという判断が下されました。

この結論については、マスコミが大々的に取り上げましたから、印象に残っている方も多いことでしょう。

しかし、これらの結論は一般論ではなく、どちらも正社員登用制度があり、実際に運用され、登用実績があったという事情が重要な判断要素とされています。

どちらの訴訟でも原告は、正社員の1段階前への登用にチャレンジする試験を受験し、失敗して諦めていたという事情があります。

つまり、正社員登用のチャンスが与えられていたことになります。

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産業雇用安定助成金が創設されました

産業雇用安定助成金が創設されました

産業雇用安定助成金の創設>

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する「産業雇用安定助成金」が創設されました。

この助成金は、令和3(2021)年2月5日から施行されましたが、同年1月1日からの出向に遡って助成を受けることができます。

<対象事業主>

1. 出向元事業主

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の一時的な縮小を余儀なくされたため、労働者の雇用維持を目的として出向により労働者(雇用保険被保険者)を送り出す事業主

2. 出向先事業主

当該労働者を受け入れる事業主

<助成金の対象となる出向>

雇用調整を目的とする出向が対象です。

具体的には、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向を指します。

雇用維持を図るための助成ですから、出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことが前提となります。

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健康保険のオンライン資格確認に向けた施行規則改正

健康保険のオンライン資格確認に向けた施行規則改正

<施行規則の改正>

令和3(2021)年3月に、健康保険のオンライン資格確認が開始されることを受け、同年1月29日、厚生労働省が健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年1月29日厚生労働省令第16号)を発出しました。

健康保険のオンライン資格確認というのは、医療機関等で健康保険資格(被保険者資格)をオンラインで確認でき、マイナンバーカードを健康保険証(被保険者証)として利用できるようにするものです。

改正内容は、医療保険制度で被保険者のマイナンバーの取扱いの適正化等を図るためのものです。

以下に、主な内容を示します。

<被保険者証等の記載事項の改正>

オンライン資格確認の開始にあたっては、資格の確認を個人単位で行えるようにするため、被保険者記号・番号の個人単位化が必要になります。

このため、令和2(2020)年10月19日以降、協会けんぽで新たに発行される保険証には、記号・番号の右隣に2桁の枝番が印字されるようになっています。

この変更に伴い、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」が設けられています。

なお、この変更により令和2(2020)年10月18日以前に発行された保険証の差替えは、不要です。

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従業員のコロナ感染と会社の責任

従業員のコロナ感染と会社の責任

<労災保険の手続>

従業員が勤務中に新型コロナウイルスに感染したと思われる場合には、労災保険の適用が考えられますので、会社はその手続に協力する義務を負います。

労災認定を行うのは労働基準監督署(労働局)の権限ですから、会社側で安易に判断することは避けなければなりません。

新型コロナウイルス感染症の労災認定に関する判断はむずかしいですから、所轄の労働基準監督署と相談しながら手続を進めるのが得策です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災認定基準>

「医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」という基準があります。

この基準は、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」(令和2年4月 28 日基補発0428第1号通達)に示されているものです。

医療従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が高いですから、こうした基準が適用されるわけです。

一方で、医療従事者以外の人が新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が低いですから、同じ基準は適用されません。

医療従事者以外の人については、この通達で「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられています。

原則と例外が逆になっているわけです。

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報連相の北風と太陽

報連相の北風と太陽

<北風と太陽>

「北風と太陽」は、有名なイソップ寓話のひとつです。

ウィキペディア(Wikipedia)によると、そのあらすじは次のとおりです。

ある時、北風と太陽が力比べをしようとする。そこで、旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をする。 まず、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする。しかし寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。 次に、太陽が燦燦と照りつけた。すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から上着を脱いでしまった。 これで、勝負は太陽の勝ちとなった。

この寓話の内容から、「北風と太陽」という言葉は、物事に対して厳罰で臨む態度と、寛容的に対応する態度の対比を表すのに使われます。

<北風社長>

うちの社員は、報告・連絡・相談がなっとらん。 全社員に、「正しい報連相研修」「効果的な報連相研修」を受けさせよう。 人事考課の評価基準では、「上手な報連相」を重点項目に据えよう。 そして、下手な報連相、間違った報連相は、懲戒処分の対象にしよう。

ここまでいかなくとも、報告・連絡・相談のスキルアップを社員に求める会社は多いものです。

社員ひとり一人が、報連相の能力をアップすれば、会社全体の風通しが良くなり、生産性がアップするに違いないと考えるのでしょう。

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労災手続などの押印見直し

労災手続などの押印見直し

<通達の発出>

令和3(2021)年1月7日、厚生労働省労働基準局から都道府県労働局に宛てて「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」という通達が発出されました。

これまでも、労働基準局が所管する手続のうち、押印または署名を必要としていたものについては、「押印を求める手続きの見直し等のための厚生労働省関係政令の一部を改正する政令等の施行等について」「押印を求める手続きの見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令等の施行等について」「労働基準行政システムに係る機械処理事務手引(労災)の一部改定について」などの通達が発出されてきました。

今回の通達は、これらを補充・訂正する内容となっています。

社内での押印見直しを進めるにあたって、参考とすべき点が多いことから、以下にその概要を紹介します。

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在宅勤務の経費負担を適正化する

在宅勤務の経費負担を適正化する

<在宅勤務の経費負担>

在宅勤務の経費負担については、就業規則や個別の労働契約により定められます。

それが適正かどうかは、各企業の判断に任されていることになります。

令和3(2021)年1月15日、国税庁のホームページに、企業がテレワークを行う従業員に対して費用補助を行う場合の課税取扱いに関する「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 」が公表されました。

これは、在宅勤務の経費負担について、国の考えを示していることになりますから、自社の定めが適正であるかを確認する際の重要な資料になると考えられます。

以下項目ごとに、その内容をご紹介します。

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労働問題(労使トラブル)で悩む理由

労働問題(労使トラブル)で悩む理由

<労働問題解決の手順>

労働問題の解決は、1.事実の確認、2.問題の抽出、3.解決策の立案4.解決策の実行 という4つのステップで行うのが基本です。

我々人間だけでなく、すべての生物は事実を頼りに判断しています。

ですから、最初に事実を確認すべきです。

これが不十分なまま、先に進むのは時間の無駄ですし、対応について悩んでしまうことになります。

次に、確認した事実の中から問題を抽出します。

ここでは、法令や判例などの法的知識と、人間関係に関する知識・経験がものをいいます。

知識・経験が不十分なまま問題を抽出しようとしても、やはり悩んでしまうことになります。

そして、解決策の立案では、a.目の前の問題を収束させる即効性のある解決策、b.長期的視点からの改善策、c.再発防止策 の3つを明確に分けて考える必要があります。

この3つのうちの1つでも欠けていると、問題が再燃し悩んでしまうことになります。

あとは、解決策を計画化して実行するだけです。

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コミュニケーションコスト

コミュニケーションコスト

<コミュニケーション不足>

コミュニケーションというのは、人と人との間で行われる知覚・感情・思考の伝達です。

労働問題の原因の大半は、コミュニケーション不足にあると考えられます。

コミュニケーションの良い職場では、労働問題が少ないといえます。

しかし、「コミュニケーションを心がけましょう」と言ってみたところで、それは掛け声に終わってしまいます。

<コミュニケーションコスト>

コミュニケーションコストとは、知覚・感情・思考の伝達に必要な、時間・労力・精神的負担のことです。

短時間で手軽に気軽に伝われば、コミュニケーションコストが低いことになりますし、長時間にわたり苦労しないと伝わらないのは、コミュニケーションコストが高い状態です。

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労働条件の決定・変更

労働条件の決定・変更

<労働条件>

労働条件は、原則として労働契約の内容です。

ただし、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

法令には、労働基準法、最低賃金法、賃金支払確保法、男女雇用機会均等法などが含まれます。

労働協約は、労働組合法に従って締結された、労働組合と使用者(またはその団体)との取り決めをいいます。

<労働契約の原則>

労働契約法第3条は、労働契約の原則を次のように定めています。

【労働契約の原則】

1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。 2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。 4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。 5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

労働基準法は、使用者に多くの義務を課し違反に対して罰則を設けている一方で、労働者に対する罰則はありません。

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