<賃金の支払い義務>
会社は毎月1回以上、定期的に賃金を支給していれば、労働者が前借りを申し出たとしても、原則として、これに応じる法的な義務はありません。〔労働基準法24条〕
したがって、会社が給料の前借りに応じるかどうかは、会社の判断に任せられることになります。
特にルールの無い会社では、労働者からの前借り要求に応じなくても違法ではありません。
<非常時払いとは?>
しかし、労働者は賃金を主要な収入源としています。
そこで、出産、疾病、災害などの不時の出費を必要とする事情が生じた場合には、これに対応できるよう、その賃金の繰上げ払いを会社に請求できる権利が保障されています。〔労働基準法25条〕
これが賃金の非常時払いです。
<非常時払いの対象は?>
非常時払いは、賃金の繰上げ払いであり「既往の労働に対する賃金」について認められます。
一方で、賃金は後払いが原則です。〔民法624条〕
ですから、労働者は「既に行った労働」に対する賃金を、給料日前に支払うよう会社に請求できるだけです。
前借りというのは、これから行う予定の労働に対する給料の支払いです。しかし労働基準法は、前借りの権利まで保障しているわけではないのです。
社会保険労務士 柳田 恵一
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