嫌疑不十分で行った懲戒解雇は不当か

嫌疑不十分で行った懲戒解雇は不当か

<嫌疑不十分で行った懲戒解雇の有効性>

懲戒処分の理由とされている事実が真実かどうか確認できないうちに、懲戒解雇をした場合には、それが不当とされ無効となるのでしょうか。

この場合には、労働契約法15条の「客観的に合理的な理由」の存否が問題となります。

<ウワサが流れているだけなら>

ある店舗の従業員が、お客様をなぐってケガをさせたというウワサが広まったとします。その従業員は否定しています。被害者は誰なのかわかりませんし、警察の動きも見られません。この時点で、懲戒処分を行うのは不当です。なぜなら、ウワサは「客観的に合理的な理由」にはならないからです。

たとえば、社内に誰か嫌いな人がいたとき、その人について悪いウワサを流せば会社に処分してもらえるとしたら恐ろしい話です。ウワサは「客観的に合理的な理由」にはならないのです。

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<ウワサだけではなくなったとき>

しかし、ウワサの主に会社が正式に話を聞いたら「酔っていて覚えていないがやったかもしれない」と話していたところ、警察の捜査が始まり、送検されたことが新聞に掲載されたという段階では、全体の事情から「客観的に合理的な理由」があるといえます。

この場合、あとになってから、ウワサの主の無実が証明されたとしても、会社は不当な処分をしたことにはならず、損害賠償の問題にもならないと考えられます。

 

社会保険労務士 柳田 恵一