<優秀な社員に対して>
たとえば、「優秀な社員をプロジェクトのリーダーに任命したものの、その社員にはたびたびヘッドハンティングの話が来ているようだ。そこで、プロジェクトが終わるまでは辞めないという念書を書いてもらって安心したい」というケースがあります。
<給与の過払いの場合>
たとえば、「社員が会社の近くに転居して、上司に住所変更届を出した。ところが、上司がこの届を机の引き出しの中に保管して忘れてしまった。そこで、規定より高額な通勤手当が支給され続けた。本人が気づかないはずはないものの、会社側にも落ち度があった。全額一度に返済するのは無理だというので、毎月1万円ずつ給与から控除することにした。返済が終わるまでは辞めないという念書を書いてもらって安心したい」というケースがあります。
<その効力は?>
「退職しません」という念書は、本人が同意していても、職業選択の自由〔日本国憲法22条1項〕の侵害や労働契約への不当な拘束になって法的効力はありません。
それでも、心理的な拘束力はあるでしょう。会社としてはこの心理的な拘束力に期待して念書を書いてもらっているといえます。
もちろん従業員には、この念書に同意する義務はありません。
念書を使うときは、会社側も従業員側もよく考えてからにしましょう。
社会保険労務士 柳田 恵一
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