<安易な運用>
上司から部下へ「昨日は2時間の残業ごくろうさん。今日は2時間早く上がっていいよ」という話があるかもしれません。
しかし、残業は25%以上の割増賃金なのに、早退による欠勤控除に割増はありません。残業2時間分の賃金は、時間単価×1.25倍×2時間で、通常の賃金の2.5時間分にあたります。それなのに、相殺するということは0.5時間、つまり30分間のタダ働きが発生してしまうのです。
もちろん、この運用は違法です。〔労働基準法37条1項本文〕
<フレックスタイム制>
きちんと手続きをして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。
これは、労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。
<月60時間を超える残業>
中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法37条3項〕
代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。
社会保険労務士 柳田 恵一