過労自殺と会社の責任

過労自殺と会社の責任

<過労自殺と労災保険の適用>

自殺は故意に自分の命を絶つ行為ですから、一般には労働と死の結果との間に相当因果関係が無く、原則として業務が原因であるとは認められないので、労災保険が適用されません。

ここで相当因果関係というのは、労働と災害との間に「その労働が無ければその災害は発生しなかった」というだけではなく、客観的科学的に見て「災害の有力な原因が労働だと考えるのが自然である」「その労働からその災害が発生するのは、偶然でもなく、異常なことでもない」という関係があることをいいます。

しかし、過重な労働によりうつ病になり、うつ病によって自殺したといえる場合には、労災保険が適用されます。この場合には、労働とうつ病との間に相当因果関係があり、さらに、うつ病と自殺との間にも相当因果関係が認められれば、結局、労働と自殺との間にも相当因果関係が認められて、労災保険の給付対象となるということです。

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<安全配慮義務と債務不履行責任>

労災保険による補償とは別に、会社に安全配慮義務違反などが認められれば、従業員の遺族から会社に対し債務不履行を理由とする損害賠償請求がなされることもありえます。

安全配慮義務というのは、労働契約により当然に会社が負う義務です。この義務に違反すれば、会社の債務不履行になります。〔民法415条〕

会社は労働者がきちんと働ける環境を整えなければなりません。危険な労働環境で働かせようとするのは、労働契約についての債務不履行となるのです。

会社は労働者が精神を病んでしまう状態で働いているのを放置しておいて、実際に労働者がうつ病などにかかれば、債務不履行責任を負うことがあります。そしてそのうつ病が原因で自殺すれば、自殺についても責任を問われかねないということです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一