<制裁規定の制限>
3回遅刻したら、制裁の意味も含めて1日分の給与を欠勤控除するというルールは適法でしょうか。
法令には減給処分の制限として、次の規定があります。
「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」〔労働基準法91条〕
1つの不都合な行動に対して、減給処分は平均賃金の1日分の半額が限度ということです。
また、就業規則などに具体的な規定が無いのに減給処分をすれば、懲戒権の濫用となり無効とされます。〔労働契約法15条〕
<具体的に計算すると>
月給30万円で、月間所定労働日数が22日だとすると、1日あたりの給与は、
30万円÷22日=13,636円 と計算されます。
一方で、月給30万円であれば平均賃金の1日分は約1万円、その半額は約5千円ですから、この5千円を大きく上回る13,636円を減額することは、制裁規定の制限を超えてしまいます。
<制度としての合理性>
1分の遅刻を3回でも、3時間の遅刻を3回でも、同じように1日分の給与を減額するというのは明らかに不公平です。
出勤の途中で遅刻しそうだと思った社員は、喫茶店でくつろいでから3時間遅刻して出勤するかもしれません。また、病気だとウソをついて年次有給休暇を取得するかもしれません。
遅刻3回で1日分の給与を減額するルールというのは、ブラック社員を生み出す原因となりかねないのです。
社会保険労務士 柳田 恵一
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