<求人広告と労働契約>
求人雑誌やハローワークの求人票で条件を確認し、入社して最初の給与明細書を見たら、広告よりも少ない金額で計算されていたということがあります。この場合、差額を会社に請求することができるでしょうか。
求人広告は、募集のための広告であって、広告の中身がそのまま労働契約の内容になるわけではありません。
契約は、申込と申込に対する承諾によって成立します。
もしも、求人広告が申込で応募が承諾ならば、求人広告の内容で労働契約が成立します。しかし、求人広告は申込を誘っている広告に過ぎません。その証拠に、応募したからといって誰もが採用されるわけではありません。
実際には、応募が申込で採用決定が承諾になります。
<裁判になったら>
裁判になった例でも、「求人広告に記載された基本給額は見込額であり、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての金額である」と判断されています。
結局、求人広告に書いてある労働条件と、その後、採用にあたって合意した労働契約の内容が異なる場合には、労働契約の内容が優先されることになります。
<トラブル防止のために>
使用者は、雇い入れ時に、賃金や労働時間などの労働条件について、書面を交付する方法で労働者に明示しなければならず、その明示された労働条件が、事実と異なる場合は、労働者は即時に労働契約を解除できます。〔労働基準法15条2項〕
ですから、求人広告などを見て考えていた内容や、採用面接のときの説明よりも悪い労働条件ならば、労働者の方から採用を辞退して身を護ることになります。
社会保険労務士 柳田 恵一
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