<さかのぼった懲戒処分>
過去の行為について、懲戒処分を行おうとする場合には、次のようなパターンが考えられます。
・過去に一度懲戒処分を行った行為について再び懲戒処分を検討する場合
・懲戒処分の対象とならなかった行為について蒸し返す場合
<再度の懲戒処分>
「二重処罰の禁止」というルールがあります。〔日本国憲法39条〕
一度処分や処罰を受けた事について、重ねて処分や処罰を受けないというルールです。
このルールは、社内の懲戒処分についても当てはまりますから、原則として、過去に一度懲戒処分を行った行為について、再び懲戒処分を行うことは許されません。
ただし、常習犯の場合には例外が認められます。
たとえば遅刻を繰り返す社員に、厳重注意をしたうえで始末書を提出させたとします。それにもかかわらず、相変わらず遅刻を繰り返しているという場合、今度は一段重い懲戒処分にするということがあります。
これは、就業規則に懲戒処分を受けたにもかかわらず同じ過ちを繰り返した場合の規定を置くなど、条件を満たしていれば有効です。
<蒸し返しの懲戒処分>
「一事不再理(いちじふさいり)」というルールあります。〔日本国憲法39条〕
一度処分や処罰が検討された行為については、後からもう一度処分や処罰を検討されないというルールです。
このルールは、社内の懲戒処分についても当てはまりますから、蒸し返しによる懲戒処分は許されないのです。
会社が一度大目に見たことについて、改めて懲戒処分を検討するというのは、自己矛盾の行動であり不誠実です。また、退職に追い込むための嫌がらせの意図も感じられます。場合によっては、会社ぐるみのパワハラとなるでしょう。
社会保険労務士 柳田 恵一
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