就業規則に不合理な規定があっても有効か

就業規則に不合理な規定があっても有効か

<就業規則の性格>

就業規則には職場のルールが定められ、労働者にある程度共通する労働条件の統一的内容が示されています。

ですから、これに従うのが当然であるというのが、使用者と労働者の共通認識だと考えられます。

しかし、就業規則は使用者が一方的に作成するものです。

労働基準監督署長に就業規則を届け出る場合には、労働者の過半数で組織される労働組合または労働者の過半数を代表する者の「意見書」を添付します。

「意見書」は労働者側の意見を示したもので、使用者はこれに従う義務どころか応答する義務もありません。

契約であれば当事者の合意を根拠として、その内容に従う義務を負うのは当然ですが、就業規則は契約ではないのです。

 

<就業規則の順守義務>

次の2つの条件を満たしている場合には、労働者も使用者も就業規則の規定に従う義務があります。〔労働契約法7条〕

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・合理的な労働条件を定めていること

・周知されていること

ですから、合理的ではない就業規則に労働者が従う義務は無いということになります。

 

<「合理的」の判断基準>

労働契約法は、裁判所が判断するにあたって形成してきた理論(判例法理)を立法化したものです。そして、2007年の成立後も数多くの裁判例があらわれています。

それでも、統一的な基準ができているわけではなく、一つひとつの具体的な事例に即して判断する形がとられています。

つまり、多くの労働法と、さらに多くの裁判例を踏まえて、具体的な就業規則の規定の合理性を判断する必要があるのです。

ですから、個人的な見解によって、就業規則の規定を不合理だと即断することは慎みたいものです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一