<産休に関する規定が無いと>
就業規則に産前産後休業についての規定が無い会社では、従業員が希望しても産休を取ることはできず退職するしかないのでしょうか。
そもそも従業員が10人未満の会社では、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出義務がありませんから、実際に就業規則が無いこともあります。
<労働契約を規制するもの>
労働契約は、労働者の「働きます」という意思表示と、使用者の「雇います」という意思表示が合致して成立します。
そして、「契約自由の原則」があり、契約を締結するかしないか、誰と契約するか、どのような内容の契約をするかなどは、原則として自由だとされています。
しかし、この原則を制約する法令の規定として、強行規定があります。強行規定は、それに反する契約当事者間の合意にかかわらず、強制的に適用される規定をいいます。
強行規定かどうかは、条文を見ただけでは区別できず、その趣旨が社会の秩序を維持するためであったり、弱者保護のためであったりすることによって、強行規定であると解釈されます。
労働基準法は、まさに弱者である労働者を保護するための基準を示した法律ですから、その条文は基本的に強行規定だといえます。
<認められない独自のルール>
就業規則に規定が無くても、そもそも就業規則が無くても、産休を取る権利は労働基準法によって労働者に与えられています。
使用者は、就業規則のことを理由に産休を否定できません。これは、産休だけでなく、年次有給休暇、残業手当などにも当てはまります。
結局、就業規則に規定の無いことについては、労働基準法など労働法の確認が必要だということになります。
社会保険労務士 柳田 恵一