<解決法>
個人の能力を理由に給与を引き下げることは、個人的な不利益変更ですから、労働協約や就業規則の変更ではなく、会社と労働者との合意の形で行うことになります。〔労働契約法8条〕
この場合に、「賃金減額に合意しなければ解雇します」などの通告をしてしまうと、強迫を理由に労働者から賃金減額に対する合意が取り消されることもあります。〔民法96条1項〕
ですから会社としては、強く迫るのではなく丁寧な説明をする必要があります。
<予防法>
とはいえ、「能力が期待外れなので賃金を減額します」と言われても、なかなか素直に納得できないでしょう。
こうしたことが起こらないようにするには、採用に至る前の段階で、求人広告に詳細な人材要件を明示すること、面接など採用選考の時点で能力を見極めることが必要です。
また採用決定後も、試用期間を設けて、雇い入れ通知書に会社の期待する能力を詳細に記述し、業務に必要な能力が欠けている場合には本採用しないことを明らかにしておきたいところです。
<本当に必要な人材か>
そもそも、期待した能力を発揮しない労働者を、社員として雇用しておくことは必要なのでしょうか。
人手不足だから、せっかく採用したのだから、かわいそうだからといった理由で、労働条件を引き下げて雇い続けることは、会社にとっても計画外ですし、本人も意欲的に勤務できないでしょう。
会社としては、別の人材を獲得する方向で考えるのが得策ではないでしょうか。
社会保険労務士 柳田 恵一
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