<労働契約の存在>
労働者は使用者との間の労働契約に合意していますから、労務提供の義務を負っています。
使用者はこれを根拠に、労働者に対して、健康を保った状態での勤務を求めることができます。
それでも、他の会社での非常勤取締役としてのわずかな活動や、休日に軽易な労働をしている場合には、疲労の蓄積を理由に兼業を禁止できないことになります。
反対に、出勤日に深夜トラックの運転や、深夜2時までバーでアルバイトするなどは、負担が大き過ぎますから禁止することに合理性が認められます。
<権利同士の調整>
もう一つの根拠として、労働者の職業選択の自由と会社の事業活動の自由との調整があります。
誰にも、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由があります。つまり、どのような仕事をするかは基本的に自由です。〔日本国憲法22条1項〕
一方で、会社にも営業の自由があって、その根拠も職業選択の自由にあります。
そして、両方の自由を調整する原理として「公共の福祉」があるのです。どちらか片方の自由が優先されてはならず、お互いにバランス良く制限し合うということです。
このことからすると、ライバル会社で副業をすることや、お客様から信頼を求められる社員が性風俗産業でアルバイトをすることには、禁止する合理的な理由があります。ましてや、それ自体違法な副業をすることは許されません。
<就業規則の効力>
たとえダブルワークを一切禁止する定めが就業規則にあったとしても、副業が本業の妨げにならず、会社に不利益を与えないのならば、禁止することができません。禁止の合理的な理由が無いからです。
社会保険労務士 柳田 恵一
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