<あいまいさの残る懲戒規定>
どんなに良くできた懲戒規定にも、あいまいな表現は残るものです。しかし、これは具体的な事情に応じて、適切な結論を出すために必要なことです。
ところが、このことが解釈の幅を広げてしまい、平等で公平な運用をむずかしくしています。
<懲戒処分に対する不信感の発生>
なにしろ、懲戒処分を検討しなければならない事件は滅多に起こりません。ですから、その場限りの判断を繰り返すことになりがちです。
こうして、懲戒処分を検討されている対象者から「今まで遅刻で懲戒処分を受けた社員はいないのに、なぜ自分だけ懲戒処分を検討されるのか」とたずねられたら、明確な回答ができない恐れがあります。これでは、心から反省してもらうことはできません。
また、出勤停止の懲戒処分があった場合に、別の社員から「自分の時は始末書を書かされただけで済んだのに」という疑問が出されたら、上手に説明できないこともあります。これでは、会社に対する不信感が高まってしまいます。
<徹底した記録の保管が必要>
懲戒処分があったときには、懲戒対象者、懲戒対象事実、懲戒処分の内容について、詳細な記録を残すことが必要です。
また、懲戒処分が検討されただけの案件についても記録の保管が必要ですし、懲戒処分が労働局の斡旋の対象になったり、労働審判の対象になったりすれば、その経緯と結論の資料も一緒に保管する必要があります。
そして、すべての社員から平等と公平が問われることを考えると、最年少社員と最高齢社員の年齢差程度の期間は記録の保管が必要です。
ここまでしないと、平等で公平な懲戒処分は実現しませんし、疑問が出されたときに納得のいく説明をすることができないのです。
せっかく、時間と労力、人件費をかけ、神経をすり減らして行う懲戒処分です。十分な効果を得るには、記録保管の労を惜しんではなりません。
社会保険労務士 柳田 恵一
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