<懲戒処分ができる場合とできない場合>
就業規則に故意に仕事の手抜きをした場合の懲戒規定があれば、その事実を証明し、本人の言い分を聴くなど適正な手続きを踏んで、懲戒処分をすることは可能です。
手抜きをしたわけでなく能力的に仕事ができない場合なら、適正な人事考課を通じて、その人の給与や賞与が調整されますから、きちんと仕事ができている人との間で不公平の問題は生じません。
そもそも能力不足に対する懲戒処分は意味が無いのです。反省して心を入れ替えても、できないことはできないのですから。むしろ、会社が教育研修に力を入れる必要があります。
しかし現実には、わざと仕事をしないのか、能力不足なのかの判別は困難です。
<貢献度が基準なら>
「能力による評価」と言っても、真の能力は目に見えません。どれほど手を抜いているのかはわからないのです。
100の能力を持った人が、手を抜いて50の能力しか発揮していない場合と、50の能力しか無い人が精一杯やって50の能力を発揮した場合とでは、会社に対する貢献度は同じです。
ですから、発揮された能力を会社に対する貢献と考えて、どちらも同じ評価をすることも不合理ではありません。
<姿勢を加味するなら>
しかし上の例で、精一杯働く姿は他の社員に良い影響を与えると考えれば、50の能力しか無い人の方を高く評価することにも十分な理由があります。
反対に、会社の外でも十分な能力を身に着ける努力を続けていたものと考えれば、100の能力を持った人を高く評価するのも不当ではありません。
<適正な対応>
能力、会社に対する貢献度、仕事に対する取組姿勢など、多面的な評価基準を含んだ適正な人事考課と、その前提となる教育研修を行えば、仕事をきちんとしない社員を懲戒処分の対象とする必要は無くなるでしょう。
社会保険労務士 柳田 恵一