持ち帰り仕事に対する会社の賃金支払い義務

持ち帰り仕事に対する会社の賃金支払い義務

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

<会社から命じられた場合>

会社から命じられて、自宅や喫茶店などで業務をこなした場合、途中で進み具合のチェックが入ったり、完了の報告を求められたりすれば、労働時間の定義にあてはまるでしょう。

一方、翌日出勤するまでチェックされない場合には、テレビを観たり飲食したりでダラダラやってもわかりません。通常2時間で終わる仕事について、「5時間かかりました」という自己申告により、会社が5時間分の残業手当を支払うのは不合理です。この場合には、2時間分の賃金支払いが合理的です。

しかし実際には、労使で合意が得られにくいでしょう。

 

<社員が無断で行った場合>

業務上の資料を無許可で社外に持ち出すこと自体が問題です。

それはともかく、会社の方で把握できないならば、指揮命令下に置くことも不可能ですから労働時間とはなりません。

 

<会社が黙認していた場合>

会社が、自主的な持ち帰り仕事の存在を知っていて、これを禁止するなどの措置を取らなかった場合には、会社から黙示の命令があったものと考える余地があります。ここはグレーゾーンで、具体的な事情によって結論が分かれるところです。

 

<テレワークという働き方>

総務省がテレワーク(在宅勤務)を推進しています。

あいまいな持ち帰り仕事ではなく、ルールに従ったテレワークとして正式に認めれば、会社も社員も納得することができます。

総務省のホームページなどに公開されている情報を元に、持ち帰り仕事を社内で制度化してはいかがでしょうか。

 

社会保険労務士 柳田 恵一