<社会保険への加入拒否>
社会保険の加入基準を満たす労働契約を会社と交わしたら、自動的に社会保険に加入します。
これは、赤ちゃんが生まれた時に出生届を提出しなくても、生まれなかったことにはならないのと同じです。
ですから、一定以上の週所定労働時間、月間所定労働日数の約束で働き始め、社会保険の加入基準を満たしておきながら、社会保険への加入を拒否するというのは、法的には意味がありません。
会社は、本人が拒否していても、法令により社会保険加入手続きが義務づけられていますから、その義務に従って加入手続きを行うのが、法的には正しいということになります。
<会社によるシフト減少>
会社の方から、社会保険の加入基準を下回るようにする意図で、シフトを減らすことがあります。
しかし、本人の了解を得ることなく、このようなことをしても無効です。
会社は、社会保険の加入基準を満たす労働契約を交わしたのですから、これに拘束されます。本人との合意なしに労働契約の内容を変えることはできません。
<正しい対処方法>
もともと会社は、求人広告で所定労働時間や所定労働日数を示し、社会保険への加入も表示していたことでしょう。
そうでなくても、採用にあたっては労働条件を再確認しています。
それにもかかわらず、本人が社会保険への加入を拒否するのであれば、「社会保険の加入基準は客観的なものであり本人の意思とは無関係」であることを説明したうえで、一定の期限を設けて次のうちから1つを選択してもらうようにします。
・入社を取りやめる
・会社の社会保険加入手続きに合意する
・加入基準を下回る労働契約に変更して勤務する
期限内に回答が無ければ、原則通り社会保険の加入手続きを行うこととしておきます。
また、「加入基準を下回る労働契約に変更して勤務する」という選択肢は、会社が恩恵的に設定する選択肢ですから、無くてもかまいません。
社会保険労務士 柳田 恵一