パワハラの多面的な悪影響

パワハラの多面的な悪影響

<被害者への悪影響>

被害者はパワハラを受けたことにより、その職場にいられなくなることがあります。そこまでいかなくても、個人の能力の発揮が妨げられます。

我慢していると、うつ病や対人恐怖症などの心理的後遺症が残り、長期にわたって回復しないこともあります。この場合、再就職が困難になります。

企業としては、最終的には金銭解決を図るしかないのですが、被害者の一生を補償できるわけではありません。

 

<企業への悪影響>

パワハラの被害は、直接パワハラ行為を受けている相手だけでなく、その近くにいる同僚、後輩、部下など広範囲に及びます。こうして従業員の勤労意欲低下と、職場秩序の乱れが生じます。

被害者の退職による戦力ダウンだけでなく、職場全体の生産性低下につながります。組織力が適正に活かされなくなり、効率的な運営ができなくなります。

企業イメージの低下により、顧客も取引先も離れていきますし、金融機関からの評価も下がります。

もちろん被害者への損害賠償による金銭的損失も発生します。

 

<加害者への悪影響>

加害者の信用の失墜は職場に留まりません。顧客や取引先に対する信用も失われます。何より、家族からの信頼が失われるのが大きな打撃です。

被害者に取り返しのつかない傷を負わせたことが、被害者にとっても一生の傷となります。

加害者が会社から十分な教育を受けていなかったため、熱心な親身の指導をしているつもりで行為に及んでしまったというケースもあります。こうなると、パワハラの加害者も会社との関係では被害者でもあります。

 

<パワハラ事件の発生による萎縮>

意図的にパワハラ行為をしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導の中に、パワハラとなる部分が含まれているということが多いのです。

業務上必要な注意指導とパワハラ行為との明確な区分が微妙だというのが、パワハラの特徴です。この点、業務上必要なセクハラ行為というものが無いのとは対照的です。

社内でパワハラ事件が発生したときに、管理職がパワハラになることを恐れて、業務上必要な注意指導ができなくなってしまうのも困りものです。

やはりパワハラの定義は、職場ごとに明確にしておく必要があります。

 

社会保険労務士 柳田 恵一