<残業の性質>
残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。
少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。
そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさいとか、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいとかの包括的な命令もあります。
この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。
<上司の怠慢>
ところが実際には、上司の命令が無いままに、部下が自己判断で残業することがあります。上司は、これを発見し、注意し、禁止しなければなりません。そうしなければ、際限なく残業代が発生しますから、人件費の垂れ流しになってしまいます。
このような管理能力を備えていない上司が、部下の残業を野放しにしておくと、上司による黙示の承認があったものとされ、会社は多額の残業代を支払うことになります。支払わなければ、サービス残業とされ、未払い残業代の請求が発生します。
上司には、部下を管理する役目があって、その分給料が高いのですが、上司が給料分働かないうえに、部下の余計な残業代まで発生したのでは、会社の人件費負担は不当に重くなってしまいます。
<就業規則での対処>
就業規則には、業務が終了したら直ちに帰ることを規定しましょう。残業代が発生しなくても、ただそこに社員が残っているだけで、余計な光熱費が発生しますし、雑談していれば上司の命令を受けて残業している社員の邪魔になります。
そして残業は、上司の命令によって行うものであることを明記しましょう。上司の命令に応じるのではなく、自己判断で残業することは禁止しましょう。
<残業代を稼ぎたい社員の発見>
仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。
こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、上司が注意指導して仕事をさせなければなりません。
また、適正な人事考課への反映も必要ですし、場合によっては懲戒処分の対象とすることも考える余地があります。
社会保険労務士 柳田 恵一