営業手当は残業代の代わりにならない

営業手当は残業代の代わりにならない

<営業手当の意味>

営業手当は、営業という業務を担当することにより他の業務には無い負担があるため、その負担に応じて支給される所定労働時間内の業務に対する手当です。

ですから、所定労働時間外の手当である残業代の代わりにはなりません。また、営業手当に残業代を含めるということもできません。営業手当と残業代は、明確に区別しなければならないのです。

<よくある言い訳>

会社が営業手当を残業代の代わりに支給する、あるいは残業代を含めて支給するときの言い訳としては、「営業社員は勤務時間を把握できないから」というのが多いでしょう。

しかし、これが本当なら営業社員はサボり放題です。なぜなら、会社は営業社員の勤務時間を積極的に把握しないですし、営業手当を支給しているから把握しなくても良いと思って安心しているからです。きちんと勤務時間を把握し、営業成績を正しく評価し、個人ごとの生産性を人事考課に反映させて、給与や賞与にメリハリをつけなければサボりは防げません。

反対に、過重労働による過労死の危険もあります。営業成績の上がらない社員は、サボりどころか長時間労働に走ります。営業成績の良い社員だけがたくさん働いているとは限らないのです。万一、営業社員が過労死あるいは自殺したときに、過重労働ではなかったという証拠がなければ、遺族から慰謝料など多額の損害賠償を請求された場合に反論できません。

 

<退職者から未払い残業代を請求されたら>

残業代は25%以上の割増賃金なのですが、そのベースとなる賃金には営業手当が含まれます。会社としては、残業代の代わりに営業手当を支給しているつもりでも、その営業手当を加えた賃金の25%以上割増で残業代を計算することになるのです。会社にとっては、まるで残業代が複利計算になっているような感じを受けます。

恐ろしいのは、会社側に勤務時間のデータが無いために、退職者の手帳の記録などが証拠となりうることです。退職者の記録が誤っていることを一つひとつ立証するのは無理でしょう。

そして、退職者は過去2年分の残業代を請求することになります。労働基準法の規定する消滅時効期間が2年だからです。さらに、民法の改正があったため、これを受けて消滅時効期間は5年に延長されるかもしれません。

 

社会保険労務士 柳田 恵一