<違法な就業規則は存在する>
就業規則を作成した時には適法だったものの、法改正が繰り返されて違法だらけの就業規則になってしまうということがあります。
国際情勢、国内情勢、市場動向は変化していますし、政府が継続的に強化している少子高齢化対策に沿った法改正は、驚くほど頻繁に、そして大幅に進んでいますから、長年放置された就業規則は適法性を保てないのです。
<違法な就業規則の届出>
うっかり法令違反の就業規則を労働基準監督署長に届け出たとします。
何も指摘されないこともありますし、たまたま法令違反が見つかって指摘を受けることもあります。
違法な規定を含む就業規則であって、それが発見されたとしても「次回は直しておいてくださいね」ということで、そのまま受け付けてもらえることもあります。
このとき、きちんと会社の控えを持って行けば、就業規則を届け出たことの証として、「受付」の印を押してもらえます。あくまでも「受付」であって、「受理」や「承認」ではないのです。提出したので受け付けましたというだけのことです。
<違法な規定の効力>
労働契約も契約の一種です。契約は、当事者が話し合って自由に内容を決めることができるという原則があります。契約自由の原則です。
ところが、労働契約の場合には、使用者の立場が強く労働者は弱者であるという前提があります。実のところはケースバイケースですが、それでも労働関係法令は「労働者の方が弱い」という原則に立って法体系ができています。
このことから、本来は自由であるはずの労働契約に国の法律が介入し、労働者を保護するという役割を担っています。
就業規則は、それぞれの職場の労働者に共通な労働条件を定めています。就業規則には、いろいろ定められているのですが、労働者に共通な労働条件の規定は、必ず含まれているといえます。
そして、就業規則と個別の労働契約とを比べた場合に、違う部分があれば、労働者に有利な方が有効とされます。
さらに、その部分が法律より不利ならば、法律の規定が優先されます。
結局、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になるのです。
<違法な規定は効力がない>
このように、就業規則の中のある規定が法律に違反していたり、個別の労働契約よりも労働者に不利であったりすれば、その規定は無視されることになります。
このことが判っているので、労働基準監督署では就業規則の届出を受け付ける時に、法律違反がないかじっくりとチェックしないこともあるわけです。
社会保険労務士 柳田 恵一