業務中に不注意でケガをした人の減給

業務中に不注意でケガをした人の減給

<業務中のケガの原因>

労災のほとんどは過失により発生し、労災を起こした本人がケガをしても、周囲の人たちからは「本人の不注意だから」と言われることが多いものです。

しかし、ここで話を終わらせず、さらに原因を追及する必要があります。これは本人の責任を明確にし、再発を防止するために不可欠なので手を抜けません。

まずは、会社の安全教育です。業務を行うにあたって予めわかっている危険ポイントごとに、事故を避けるための正しい動作や手順などについて、定期的に教育が行われているでしょうか。事故が発生したということは、教育不足が疑われます。

つぎに、事故防止のための表示です。「手袋着用」「高温注意」など、必要な表示が漏れなく整っているでしょうか。

さらに、仕事による疲労の蓄積です。個人的な悩みや、プライベートでの疲労で注意力が低下していたのなら、本人の責任が重いといえます。しかし、残業続きの状態で労災が発生した場合には、不注意の責任を本人だけに押しつけるわけにはいきません。そうした勤務を許した会社の責任が問われます。

そして、本人の資質の問題があります。本人の不得意なこと、あるいは、それをこなすための能力が不足している業務を担当させていないでしょうか。適材適所ができていなければ、会社の責任も重くなります。

 

<懲戒処分による減給>

安全教育、表示、適材適所ができていて、過重労働が無かったのに事故が発生したのなら、懲戒処分を検討するのにも十分な理由があります。

しかし、この場合でも、懲戒処分により再発防止が期待できない場合には、懲戒処分の目的が果たされず、悪影響だけが残ってしまいます。

結局、懲戒処分をすべき場合というのは、上司や会社に対する恨みなどが原因で、故意に労災を発生させたような場合に限定されるのではないでしょうか。故意に事故を発生させたのであれは、減給では処分が軽すぎるかもしれません。

 

<降格・降職に伴う給与の減額>

労災事故の発生をきっかけに、現在置かれている立場の業務を行うには能力が不足していると判明する場合があります。

この場合には、適正な人事考課により職位や役職を下げて、それに応じた給与にするということもありえます。

これは、本人の身の安全を守るという観点からも、正当性の認められる場合が多いでしょう。

 

<職務の転換>

自動車事故を起こした従業員の職務から自動車の運転を外し別の業務を担当させることは、本人の身の安全を守る点では有効な手段です。

ただこの場合には、職務の転換によって給与が下がると、非公式な制裁と見られてしまいます。あくまでも、本人の心からの同意に基づき行うことにして、トラブルの発生を防ぐように心がけましょう。

 

社会保険労務士 柳田 恵一