「限定正社員」から「多様な正社員」へ

「限定正社員」から「多様な正社員」へ

<正社員の定義>

法令には「正社員」という言葉の定義がありません。

つまり「正社員」は法律用語ではないのです。

したがって、正社員の定義は会社ごとに独自に決められています。

正社員の明確な定義の無い職場も多数存在します。

一般的な正社員のイメージは次のとおりです。

・定年を除き労働契約の期間が定まっていない無期労働契約である。

・時間外労働(早出、残業)に応じる義務がある。

・深夜労働に応じる義務がある。

・勤務地が限定されず転勤に応じる義務がある。

・業務内容が限定されず異動に応じる義務がある

 

<限定正社員の定義>

上の典型的な正社員に想定される労働条件のうち、一つまたは複数を欠いている場合を「限定正社員」と呼んでいます。

一定の期間に限定されない形で、一部の労働条件について次のような特徴を備えています。

・早出や残業を免除されている。

・深夜労働を免除されている。

・転勤が全くない。または、一部の地域内に限定されている。

・異動が無い。

・1日の所定労働時間が正社員よりも短い。

・週の所定労働日数が正社員よりも少ない。

「その会社の正社員と比較して」という話ですから、正社員の定義が会社ごとに決められている以上、限定正社員の定義も会社ごとに様々です。

 

所定労働時間が1日8時間で、1週間の所定労働日数が5日という正社員が多数派です。

しかし、所定労働時間が1日6時間半で、1週間の所定労働日数が6日という少数派の会社もあります。

この少数派の会社で、1週間の所定労働日数が5日の正社員は、限定正社員であると認識されます。出勤日数が一般の正社員よりも限定されているからです。

また、多数派の会社では、1日の所定労働時間が6時間半の正社員は、限定正社員であると認識されます。勤務時間が一般の正社員に比べて限定されているからです。

 

労働時間と出勤日数の両方が限定されている正社員も、労働時間と出勤日数が限定されているうえさらに、勤務地が関東地方に限定されている正社員もいます。

こうなると、一口に限定正社員と言っても、数多くのパターンがあるわけですから、限定正社員のイメージは統一しにくいといえます。

そのためか、厚生労働省は「多様な正社員」と呼ぶようになっています。

 

<パート社員などとの比較>

労働時間や出勤日数が限定された正社員がいる一方で、同じ職場にパート社員や契約社員と呼ばれる人たちも働いていることがあります。

パート社員の中にも、正社員並みの労働時間と出勤日数の人がいる一方で、週1日だけの勤務や、1日3時間の勤務という人もいます。

こうして、正社員、パート社員、契約社員の境界線が不明確になっています。

 

就業規則などで、正社員、パート社員、契約社員などの定義が明確になっていないと、「私にこの規定が適用されないのはおかしい」という主張がされて、トラブルとなることがあります。

就業規則に具体的な定義の無い会社は、速やかに社会保険労務士などに相談して、就業規則を改定しておくよう強くお勧めします。

 

就業規則が無い会社はもっと危険です。

個人ごとに労働条件通知書や雇用契約書などで、労働条件をきちんと定めておかないことが、思わぬトラブルを招いてしまいます。

「何かあったら話し合って決める」と思っていても、トラブルが発生したら話し合いが難しくなりますから、あらかじめ決めておく必要があるのです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一