懲戒処分が無効とされないためには

懲戒処分が無効とされないためには

<懲戒処分の有効要件>

懲戒処分が有効とされるには、多くの条件を満たす必要があります。

条件を1つでも欠けば無効となり、会社としては対象者から慰謝料その他の損害賠償を請求される可能性があるわけです。

法律上の制限としては次の規定があります。

「使用者が労働者を懲戒できる場合に、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」〔労働契約法15条〕

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

 

<使用者が労働者を懲戒できる場合>

労働契約法15条には、「使用者が労働者を懲戒できる場合に」とサラッと書いてありますが、この一言には就業規則や労働条件通知書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあるという意味が込められています。

ですから、そもそも就業規則や労働条件通知書などに懲戒処分の具体的な取り決めが無ければ、懲戒処分そのものができないことになります。

 

たとえば、厚生労働省のモデル就業規則には、懲戒処分について次のような規定があります。

 

(懲戒の事由)

第62条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

①正当な理由なく無断欠勤が   日以上に及ぶとき。

②正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

③過失により会社に損害を与えたとき。

④素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。

⑤性的な言動により、他の労働者に不快な思いをさせ、又は職場の環境を悪くしたとき。

⑥性的な関心を示し、又は性的な行為をしかけることにより、他の労働者の業務に支障を与えたとき。

⑦第11条、第13条、第14条に違反したとき。

⑧その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。

 

従業員が大人ばかりでしたら、このまま自社の就業規則に使っても理解されるでしょう。

しかし、高校生のアルバイトがいるような職場では、もう少しわかりやすく、中学を卒業したばかりの人にも理解できる表現にするか、定期的に就業規則の学習会を開かないと無理がありそうです。

 

実際に懲戒規定の具体性が争われるのは、「前各号に準ずる不都合な行為があったとき」のような抽象的な表現です。

就業規則は会社が作るものですから、会社が就業規則を根拠として懲戒処分を行い、対象者がその有効性を争ったら、会社側が「前各号に準ずる不都合な行為があった」ことを証明しなければなりません。

 

<懲戒処分が無効とされないための規定>

従業員によって行われた不都合な行為が、就業規則の懲戒規定に当てはまるかどうかについて争いが生じたのでは、処分を行うのが難しくなってしまいます。

これを防ぐには、「正当な理由なく」「しばしば」「素行不良」など解釈が分かれそうな表現を具体化する必要があります。

また、「前各号に準ずる不都合な行為があったとき」とはどのような行為なのか、具体的に列挙する必要があるでしょう。

 

適正な懲戒処分を行うためには、就業規則の内容を自社に合ったものにしておくこと、必要な教育研修を繰り返し行うことなど事前の準備が不可欠です。

また、実際に事件が発生してしまった場合には、適法要件を満たしつつスピーディーに動く必要があります。

まずは、前提となる懲戒規定の再確認をお勧めします。

 

社会保険労務士 柳田 恵一