労働契約法に出てくる「社会通念上相当」の意味

労働契約法に出てくる「社会通念上相当」の意味

<労働契約法に出てくる「社会通念上相当」>

労働契約法は、解雇について次のように定めています。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

とても抽象的な表現です。

ですから、使用者が労働者を解雇しようとしたときに、それがこの規定に触れて無効になってしまうのか、それとも有効になるのかを判断するのは困難です。

辞書の説明

「社会通念」という言葉を辞書で調べると、次のように書かれています。

 

大辞林 第三版

社会一般に行われている考え方

 

デジタル大辞泉

社会一般に通用している常識または見解

 

法令を解釈するときにも、「社会一般の常識」という意味に使われています。

 

また、「相当」という言葉を辞書で調べると、次のように書かれています。

 

大辞林 第三版

状態・程度などが釣り合っていること。ふさわしいこと。相応。

違った尺度や体系上のあるものと等しいこと。対応すること。

物事の程度や状態が釣り合っているさま。ふさわしいさま。

物事の程度が普通よりかなり上であるさま。

程度が普通よりはなはだしいさま。

 

デジタル大辞泉

価値や働きなどが、その物事とほぼ等しいこと。それに対応すること。

程度がその物事にふさわしいこと。また、そのさま。

かなりの程度であること。また、そのさま。

 

法令を解釈するときの「相当」は、「ふさわしい」という意味で使われることが多いようです。

 

<法令や裁判での意味>

労働関係法令を巡っては、使用者の立場と労働者の立場が対立します。

ですから、「社会一般の常識」が必ずしも統一されていない場合には、自分に有利な解釈をしてしまいます。

そして、この対立に決着をつけるのは裁判官の判断です。

結局、この労働契約法16条の「社会通念上相当」というのは、「裁判官が認定した社会一般の常識に適っている」ということになります。

なぜなら、裁判の結論を出すのに必要な「社会一般の常識」を認定するのは裁判官ですし、その結論が社会一般の常識に照らして「ふさわしい」と判断するのも裁判官だからです。

 

裁判官の判断が基準ということであれば、法令の条文を読んで辞書を引いても、ほとんどの場合には結論が分からないことになります。

結局、具体的な事例に照らして関連する裁判例を確認して、裁判官がその事例について「社会一般の常識」の内容をどのように認定し、それに「ふさわしい」結論はどうなるのかを確認しなければなりません。

ですから、使用者自身の判断で解雇に踏み切るのはリスクが大きすぎます。

解雇できるのかできないのか、解雇するためには何が必要か、解雇できない場合にはどうしたら良いのか。

こうしたことは、弁護士や社会保険労務士など専門家のアドバイスを聞きながら慎重に判断したいところです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一