<モデル就業規則とは>
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。
就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
これを受けて、厚生労働省は就業規則のひな形を公表しています。これが「モデル就業規則」です。
各事業場は「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則の作成・変更を行うことができます。
就業規則は、各事業場の実情に合っていなければ、トラブルの元となってしまうことがあります。
「モデル就業規則」は、規定例だけでなく詳細な解説が施されていますので、これを手がかりにカスタマイズすることになります。
この「モデル就業規則」は、法改正などに対応するため、不定期に改定されています。
従来の平成28年3月版の改定版が、平成30年1月31日に公表され、ページ数も82ページから89ページに増えています。
<新設された規定>
マタニティ・ハラスメントの禁止規定(14条)
パワハラ、セクハラに続き、マタハラの禁止規定が新設されました。
政府による少子高齢化対策の継続的な推進に対応しています。
その他のハラスメントの禁止規定(15条)
標題は「その他あらゆるハラスメントの禁止」となっていますが、「性的指向・性自認に関する言動によるもの」を示していますので、LGBTへの対応を考えたものと思われます。
ハラスメントは、嫌がらせであり人権侵害ですから、刑法などにより処罰されたり、民法や会社法による損害賠償の対象となったりしますが、就業規則に明示して従業員に周知する必要があります。
副業・兼業についての規定(67条)
政府による少子高齢化対策に関連して、働き方改革の推進も行われます。
企業に対しては、副業・兼業の容認が求められていますので、これに関する規定が新設されました。
<規定や解説の変更・修正>
労働条件の通知(7条)の解説
採用内定に際しては、内定者に労働条件を書面で明示する必要があることの説明が追加されました。
人事異動(8条)の解説
育児休業や介護休業への配慮についての説明が追加されました。
遵守事項(11条)の一部削除
「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除されました。
企業に対しては、副業・兼業の容認が求められていますので、これに対応した変更です。
始業及び終業時刻の記録(17条)の解説
労働時間の「適正把握基準」が、平成29年1月20日に「適正把握ガイドライン」に代わりましたので、これへの対応です。
従業員について、労働時間の把握が厳格化されています。
社外での勤務について、きちんと労働時間を把握していない職場は対応が迫られています。
労働時間及び休憩時間(19条)の解説
手待ち時間についての説明を、労働時間の「適正把握ガイドライン」の記載に合わせて修正しています。
家族手当(33条)の変更
家族手当から、配偶者手当が削除されています。
これも、政府による少子高齢化対策の継続的な推進に対応しています。
配偶者手当があると、専業主婦は働き手になりにくいので、これをなくして積極的に働きに出るよう促すわけです。
社会保険労務士 柳田 恵一