日本郵便訴訟の大阪地裁判決と企業のとるべき対応

日本郵便訴訟の大阪地裁判決と企業のとるべき対応

<日本郵便訴訟の大阪地裁判決>

正社員と同じ仕事をしているのに手当などに格差があるのは違法だとして、契約社員(有期労働契約、以下同じ)が日本郵便を相手に提起していた訴訟の判決が、平成30年2月21日に大阪地裁で下されました。

この判決では、扶養手当、住居手当、年末年始の勤務手当の不支給は不合理な労働条件の相違に当たるとして、日本郵便に賠償金の支払いが命じられています。

<法律の規定>

この訴訟で、契約社員が主張の根拠としたのは、主に労働契約法の次の条文です。

 

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

有期労働契約であることのみを理由に、契約社員の処遇を正社員と差別してはいけません。

ただし、業務の内容、業務に伴う責任の程度、職務の内容、配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理でなければ許されます。

 

そして、不合理かどうかは「労働契約法の趣旨や目的に適合するか否か」ということが基準になると考えられます。

労働契約法の目的は他の多くの法令と同じように、第1条に書かれています。

これと他の条文全体の趣旨から、不合理かどうかが確定されるわけです。

もちろんこれは、各企業に勝手な解釈が許されるわけではなく、最終的には裁判所が判断することになります。

 

<平等と公平>

この判断は、裁判所にとっても決して容易ではないでしょう。

なぜなら、平等と公平とが対立し、どちらを優先するかの判断となるからです。

 

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

 

たとえば、賃貸住宅に住んでいる従業員と、住宅を購入してローンの支払いをしている従業員に、住宅手当を支給するとします。

それが、住宅にかかる費用の一部を会社が負担するという目的であれば、契約社員でも正社員でも事情は同じですから、全従業員に支給しなければ不平等であり不合理だという判断に傾きます。

ところが、正社員の全員について転居を伴う異動が定期的にあり、この負担を補うために住宅手当を正社員には支給するが、異動の無い契約社員には支給しないというのは、公平の考え方によるものですから不合理ではないという判断に傾きます。これは、労働契約法20条の「配置の変更の範囲」という文言も根拠となります。

実際には、住宅手当を支給する目的が不明確であって、平等と公平のどちらを重視すべきか判断に迷うことが多いでしょう。

 

<企業のとるべき対応>

まず、正社員と契約社員とで異なる処遇をする場合には、その根拠が明確になるように就業規則にわかりやすく定めることが必要です。その根拠が、「業務の内容、業務に伴う責任の程度、職務の内容、配置の変更の範囲」の違いを明確に示すものであれば、より一層合理性が明らかとなります。

また、契約社員には、処遇の違いについて、その根拠や目的と共にきちんと説明しておきます。できれば、定期的に説明会や面談を繰り返すことが望ましいでしょう。

さらに、関連する裁判の判決が出たら、自社の場合と比較して問題の無いことを確認します。ここで、もし不安な部分があれば、就業規則の改定や契約社員への説明内容の変更が必要となります。

 

これらは手間のかかることですが、政府が働き方改革を進め、同一労働同一賃金を目指している以上、企業も今、適正な対応が求められています。

 

社会保険労務士 柳田 恵一