<酷評化傾向(厳格化傾向)>
酷評化傾向というのは、評価がついつい厳しくなる傾向です。
仕事をこなす能力の高い人が、自分を基準にして評価する場合に起こります。
また、実際に能力が高くなくても、自分にかなり自信を持っていれば同じ傾向を示します。
日常の業務でも、部下を追い詰めたり、あら探しをしたりの言動が見られます。
これでは、評価に差が出ないため人事考課の目的を果たせません。
また、部下が絶望してしまいメンタルヘルス障害に陥ったり、退職に追い込まれてしまったりの危険もあります。
<役職者としての能力不足>
役職者には、部下の一人ひとりを育てる役目もあります。その役目を果たすためには、部下の具体的な業務内容だけでなく、個性もしっかり把握する必要があります。
部下の全員が自分と同じ個性を持っているかのように振る舞っていては、部下を育てることができません。
そもそも、自分自身の成長や昇進ばかりを考え、自分の能力だけ磨いている役職者では、部下をどう育てるかの指針や目標を立てることも困難です。
<酷評化傾向を示す役職者への対応>
人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。
そして、酷評化傾向を示す役職者には、人事考課の目的の再確認、部下を育てる能力の開発や役割認識について重点を置いた教育研修が必要でしょう。
それでもなお、きちんとした人事評価ができないのであれば、適性を欠くものとして考課者から外すことも考えなければなりません。
そもそも、こうした人物が役職者になってしまうのは、個人的な能力の高さだけで抜擢され、人を育てる能力が評価されていない可能性が高いと思われます。
「仕事ができる人の人事考課は正しいはずだ」という思い込みを捨て、酷評化傾向が現れていないか再チェックすることをお勧めします。
社会保険労務士 柳田 恵一