<期末誤差>
就業規則で昇給時期や賞与支給時期が決まっているのが一般です。
給与の決定には1年間の、賞与の決定には半年程度の人事考課期間が設定されていることでしょう。
考課者にとっては、評価期間の最初の方よりも、評価期間の最後の方が印象深いため、評価決定に近い時期の働きぶりを重視しすぎてしまう傾向が見られることもあります。これを期末誤差といいます。
評価される社員の中には、このことを期待して、評価の実施時期が近づくと張り切る人もいます。中には、出勤するなり「今日も1日頑張るぞ!」と気合を入れ、勤務終了時に「今日も1日頑張ったなぁ!」と言うような口先だけの人もいます。そして、この時期だけ目立って残業する人もいるのです。
<考課者の取るべき対策>
期末誤差を防ぐには、考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えておくこと、評価対象者と定期的に話をして常に働きぶりを見ていることを伝えておくことが必要です。
<会社の取るべき対策>
考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えるというのは、実際にはむずかしいことです。どうしても、後回しにしがちです。
考課者に対しては、毎月、評価対象者の評価を会社に提出させるなど、具体的な報告義務を負わせるのが確実です。
また、人事考課については、定期的な考課者研修が必須ですが、評価される側の一般社員に対しても、人事考課制度についての説明会が必要だと思われます。
評価が適正に行われるようにするためにも、会社は全社員に人事考課制度を理解させなければなりません。
<人手不足と人事考課>
人手不足の影響で、社員の出入りが激しくなっています。
有能な人材には定着して欲しいのですから、高い評価を与え、それに見合った処遇をする必要があります。
反対に、採用してはみたものの戦力化が困難な社員には、その働きぶりを客観的に示す評価をフィードバックすることで、自らの将来を見つめ直してもらうチャンスを与えたいものです。
気付いたら、必要な人材が多数流出していたというのでは困ります。人事考課の適正な運用のため、労力を惜しまないようにしましょう。
社会保険労務士 柳田 恵一