<望ましい社員像>
企画力、実行力、改善力といった能力が高い人は、これらの能力が低い人よりも、良い評価を与えられます。
これらの能力は、業務遂行に必要であり、高いレベルで身に着けていることが望ましいからです。
同様に、責任性、積極性、協調性が優れている人は、これらの態度が見られない人よりも、良い評価を与えられます。
これらの態度は、職場の一員として必要であり、組織全体に良い影響を与えますから望ましいと考えられるのです。
このように、人事考課の基準というのは、職場にとって望ましいものを高く評価し、望ましくないものを低く評価するようにできています。
極論すれば、すべての項目で最高の評価を与えられる社員は、理想的な社員ということになります。
<考課基準公開のメリット>
良い評価には、昇給や賞与の増額など、処遇の向上が伴います。
ですから、向上心も欲も無い一部の社員を除けば、良い評価を与えられたいと望んでいます。
しかし、考課基準を秘密事項に設定し、一部の考課者だけが知る情報としていたら、一般の社員は、どうしたら良い評価を得られるのか、努力の方向が見えないことになります。
やはり、具体的な評価基準を社内に公開することによって、理想的な社員像に近づく努力を促した方が、会社にとっても社員にとってもメリットが大きいということになります。
<違法な考課基準>
次のような考課基準の例は、すべて違法なものです。たとえ文書化されていないとしても、人事考課の運用基準として、加味してはならない項目ばかりです。
・年次有給休暇を多く取得するほど評価が下がる。
・サービス残業や持ち帰り仕事が多いほど評価が上がる。
・労働組合に入っていると評価が下がる。
・結婚や出産の予定があると評価が下がる。
・パワハラやセクハラの被害にあったと主張すると評価が下がる。
・会社の労働基準法違反の事実を労働基準監督署に申告すると評価が下がる。
・法定の権利を主張して育児や介護のために休むと評価が下がる。
このような違法な考課基準があれば、直ちに改善すべきです。
そして、適正な考課基準であることを確認のうえ、公開することをお勧めします。
社会保険労務士 柳田 恵一