契約自由の原則と同一労働同一賃金との関係

契約自由の原則と同一労働同一賃金との関係

<契約自由の原則>

契約自由の原則は、契約を当事者の自由にまかせ、国家はこれに干渉してはならないとする近代法の原則です。

これには、契約をする自由・しない自由、契約の相手方選択の自由、契約内容決定の自由、口頭か書面によるのかなど方式の自由、契約内容変更・契約解消の自由が含まれます。

契約に関する基本事項を規定している民法に、契約自由の原則を直接規定する条文は無いのですが、90条(公序良俗違反の法律行為の無効)や91条(任意規定と異なる意思表示)などにその趣旨があらわれています。

<労働契約法の規定>

労働契約も契約の一種であり、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立します。〔労働契約法6条〕

つまり、労働者の「働きますから賃金をください」という意思表示と、雇い主の「賃金を支払いますから働いてください」という意思表示が合致することによって、労働契約が成立します。

そもそも、労働契約法が制定された目的は、労働者と使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、または変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定または変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することにあります。〔労働契約法1条〕

このことからすると、どのような労働契約にするかは当事者の自由であって、複数の労働者が同じ価値の労働を提供する場合に、一人ひとり異なる賃金にしてもかまわないということになります。

 

<同一労働同一賃金の趣旨>

ところが、同一労働同一賃金という考え方が主張され、ガイドライン案が作成されたり、この考え方に関わる最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)が下されたりということで、話題に上ることが多くなっています。

これは、契約自由の原則の趣旨を踏まえて、労働契約の締結を自由に任せておいたところ、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、不合理と見られる待遇差が増えてしまったという不都合が問題視されているためです。

原因としては、非正規雇用労働者が雇い主との間で労働契約の内容を決定する場合に、かなり弱い立場にあって、自由な交渉が大きく制限されているという実態が浮かび上がります。

つまり、当事者の対等な立場での交渉を前提とする契約自由の原則は、非正規雇用労働者には当てはまらないのに、当てはまるものとして放置されてきたことに対する反省があります。

ただ、日本国内で言われている同一労働同一賃金は、同一企業内での話に留まっていますし、完全に同一や均等までは求められていません。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者との区分がある以上、その間の格差は当然に存在するものであることは認め、不合理な差別とならないように均衡を求める趣旨となっています。

労働契約法20条も、次のように規定しています。

 

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

この条文の解釈については、平成30(2018)年6月1日の2つの最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)にも示されています。

 

<企業のとるべき対応>

基本給、手当、退職金、休暇などについて、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な格差があるのであれば、均衡するように改める必要があります。

また、不合理な内容ではなくても、両者で異なる取扱いをしている場合には、就業規則に具体的な趣旨や合理性を説明しておくことが必要です。

たとえば、正社員だけに住宅手当を支給しているのであれば、「契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得るから」という理由の明示が必要となるのです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一