月別: 2018年10月

20年も前のセクハラを理由とする懲戒処分

20年も前のセクハラを理由とする懲戒処分

<懲戒処分の時効>

懲戒処分について、消滅時効期間を定める法令はありません。

会社の就業規則にも「○年以上経過した事実を理由に懲戒処分は行わない」などの規定は無いでしょう。

ただ、懲戒処分は労働契約に付随するものですから、次に示す民法の基本原則が適用されます。

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女性社員を昇給対象外とすることの正当性

女性社員を昇給対象外とすることの正当性

<理論上許される場合>

「女性社員だけ昇給しない」と決めて昇給しないのであれば、一般には労働基準法違反となってしまいます。

ただし、男女平等の人事考課により、合理的な昇給制度を運用した結果、偶然、女性社員だけが昇給しなかったのならば、適法ということになるでしょう。

また、社内で男性社員の賃金水準が女性社員に比べて低い場合に、男女間の格差を是正するための措置として許される場合もあります。

しかし、会社側がこれらの適法性を証明するのは容易ではありません。

また、例外的に適法性を証明できたとしても、その正当性が支持されるとは限りません。

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平成30年版『労働経済白書』から分かること

平成30年版『労働経済白書』から分かること

 

平成30(2018)年9月28日、厚生労働省が閣議で「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

 

<労働経済白書の趣旨>

「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書で、今回で70回目の公表となります。

少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が、持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠です。

そのためには、資本への投資に加えて、人への投資を促進していくことが重要です。

平成30年版では、こうした認識のもと、働き方の多様化に対応した能力開発や雇用管理の在り方についてさまざまな視点から多面的な分析が行われています。

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健康保険の扶養家族認定の厳格化

健康保険の扶養家族認定の厳格化

 

平成 30 (2018)年 10 月 1 日から、日本年金機構で受け付ける「健康保険被扶養者(異動)届」について、添付書類の取扱いが変更になりました。

 

<認定事務の変更>

厚生労働省から「日本国内に住んでいる家族を扶養家族(被扶養者)に認定する際の身分関係と生計維持関係の確認について、申立てのみによる認定は行わず、証明書類に基づく認定を行うこと」という事務の取扱いが示されました。

これを受けて、日本年金機構への届出に際しては、下に示す【添付書類一覧】の書類の添付が必要になりました。

なお、一定の要件を満たした場合には、書類の添付を省略することが可能となります。

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こんな人がパワハラの加害者になりやすい

こんな人がパワハラの加害者になりやすい

<リスク回避のため>

パワハラに走る人には、共通点があると言われています。

共通する特徴は、普段の行動の傾向にも現れます。

こうした傾向の現れている人に、会社が部下や後輩を与えると、パワハラを誘発することになります。

リスク回避のためには、これらの傾向が消えるまで教育研修などを行い、人事異動を慎重にするなどの配慮が必要でしょう。

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労働者を保護するための「みなし規定」

労働者を保護するための「みなし規定」

<みなし規定の効果>

法令の中に「みなす」「推定する」という言葉が出てきます。

日常会話では厳密に区別されませんが、法令の条文ではその意味合いに大きな違いがあります。

「みなす」という表現が使われている規定は、「みなし規定」と呼ばれます。

ある事実があった場合に、その事実さえあれば、自動的に一定の法的効果を認めるという規定です。

「例外的な事情があって法的効果を否定したい」と考えて証拠を集めても、法的効果を否定することができません。

「推定する」という表現が使われている「推定規定」であれば、実際はその推定が不合理であることを証明して、法的効果の発生を阻止することができるのですが、「みなし規定」では覆すことができないのです。

 

<労働法とみなし規定>

労働法では、主に労働者を保護するために「みなし規定」が置かれています。

たとえば、次のような規定があります。

 

労働基準法38条2項

坑内労働については、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。

 

つまり、賃金を計算するときには、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までのすべての時間を労働時間として計算しなければなりません。

たとえ、1日2時間の休憩時間を設けていたとしても、休憩が無かったものとして計算します。

日当を設定する場合には、1時間あたりの最低賃金に、このルールで計算した労働時間をかけ合わせて、最低賃金法違反にならないようチェックする必要があります。

 

また、年次有給休暇の付与基準である出勤率について、次の規定が置かれています。

 

労働基準法39条8項

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

つまり、法律によって休業することが認められた日については、すべて出勤したものとみなして出勤率を計算することになります。

業務災害による休業や、育児・介護休業を欠勤扱いにして、出勤率が80%を下回ったら年次有給休暇を付与しないという運用はできません。

 

労働契約法にも、有期労働契約の無期転換(18条1項)と更新(19条)に「みなす」という規定があります。

 

「常識的に見て」「実際には」などの理由で法的効果を否定できないところに、みなし規定の怖さがあります。

 

社会保険労務士 柳田 恵一

年休を積極的に取得させる義務の対象者

年休を積極的に取得させる義務の対象者

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

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定年後の再雇用で重要な所定労働日数・時間

定年後の再雇用で重要な所定労働日数・時間

<再雇用と賃金>

会社と労働者とで定年後も働き続けることの合意がなされる場合に、労働条件については、どうしても賃金ばかりが重視されがちです。

再雇用の実績が多い会社では、定年前の賃金のおよそ何パーセントという相場があるでしょうから、賃金についての合意は比較的容易かも知れません。

年金については、性別と生年月日によって支給開始の時期が異なりますし、60代前半と65歳以降とでは支給額が大きく異なります。また、配偶者の生年月日によって、加給年金額や振替加算についても違いが出てきます。

これらを踏まえ、期間ごとの賃金変動まで合意しておくこともあります。

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年間平均による随時改定(月変)(平成30(2018)年10月以降)

年間平均による随時改定(月変)(平成30(2018)年10月以降)

<定時決定(算定)での特例>

一般に行われるように、毎年4月~6月の3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を算出すると、業務の時期的な繁閑によって、異常に高くあるいは低くなってしまうという不合理が発生することがあります。

そこで、前年7月~当年6月までの1年間の報酬の月平均額によって算出した標準報酬月額と、一般的な計算により算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差があり、この差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合には、申し立てにより、過去1年間の月平均報酬月額により標準報酬月額を算定することができるようになっています。

社会保険料の定時決定(算定)では、4月~6月の3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を算出するのが原則ですが、この3か月間だけ極端に残業代が多かったり少なかったりすると、著しく不当な標準報酬月額となるため、これを避けるために年平均の額で計算することができるわけです。

これには、事業主の申立書と本人の同意等の提出が必要です。

(正式名称は「年間報酬の平均で算定することの申立書」と「保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等」です)

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ひとり残業の問題と解決

ひとり残業の問題と解決

<上司による管理>

上司は部下の仕事ぶりを管理しています。しかし、部下が全員帰るまで、いつも上司が会社に残っているというのは不合理です。

ある程度育った部下のことは信頼して、ひとりで残業させるというのも許されるでしょう。

しかし、部下だけで残業させておいてノーチェックというのも、上司としての職責を果たしていないことになります。

残業代が欲しくてただ残っているだけの部下に気付かないのでは、その部署の責任者として人件費の管理ができていないことになってしまいます。

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