<働き方改革>
働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。
しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。
<生産性の低下>
ここでいう生産性とは、労働生産性のことです。これを式であらわすと次のようになります。
労働生産性 = 労働による成果 ÷ 労働投入量
より少ない労働で、より大きな成果が得られれば、労働生産性が高いということになります。
ところが、この式の中の「労働投入量」が「人件費」にすり替えられてしまうことがあります。
その結果、担当者の残業代カットや管理監督者ではない単なる管理職に残業代を支給しないという違法な現象が発生します。
これによって、労働生産性は低下します。
なぜなら、労働投入量は変わらず、労働による成果が減少するからです。
残業代をカットされる会社の従業員は、残業代をカットされない会社の従業員よりも意欲が低下しますから、長時間職場にいても労働による成果が減少します。
長時間労働であれば、精神的肉体的疲労によって、さらに労働による成果が減少します。
転職のことを考えながら将来に対する不安を抱えて働いても、会社に貢献できるはずがありません。
労働基準法41条2号に規定されている管理監督者は、管理職や役職者の中のほんの一部なのですが、誤った解釈によって残業代が支給されていないことがあります。
こうした職場で、部下の残業を禁止して、こなし切れない仕事は上司が行うことにすれば、人件費は減少します。
しかしこの上司は、疲労の蓄積とマネジメントに必要な時間の減少によって、適切な判断や部下への指示がむずかしくなります。
こうして上司だけでなく、部下の労働による成果も減少します。
さらに会社の業績が悪化すれば、もっと人件費を切り詰めようとするのでしょうか。
管理職の残業が増えている現象が見られたら、間違った方向に進んでいないか確認をお勧めします。
<生産性の向上>
従業員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。
疲労が蓄積しなければ、1時間あたりの労働による成果が増すからです。
従業員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての労働生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。
また、従業員ひとり一人の能力を向上させることも大事です。
これらを実現するために、まず取りかかることは業務を減らすことです。
次のような視点から、過去にとらわれることなく、大胆に業務をカットしてはいかがでしょうか。
・なぜこの業務を行っているのか。目的は何か、本当に必要か。
・この業務をこの時間帯に行うのはなぜか。締め切りは適切か。
・この業務をこの場所で行うのはなぜか。別の場所で行った方が良くないか。
・なぜこの業務をこの部署のこの従業員が担当しているのか。
・このやり方で良いのか。もっと良い方法はないのか。
・この業務から具体的な成果は得られているか。経営者の自己満足ではないか。
社会保険労務士 柳田 恵一