雇用情勢の概況と企業の対応

雇用情勢の概況と企業の対応

平成30(2018)年9月28日、厚生労働省が閣議で「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

この中で、雇用情勢の概況が次のように分析されています。

 

【雇用情勢の概況】

1. 2017年度の完全失業率は2.7%と1993年度以来24年ぶりの低水準となったことに加えて、有効求人倍率は1.54倍と1973年度以来44年ぶりの高水準となっており、雇用情勢は着実に改善している。

 

2. 雇用者数(15~54歳)の推移をみると、正規の職員・従業員は3年連続で増加しており、2017年では2,841万人(前年差36万人増)となった。

 

3. 他方、雇用人員判断D.I.により人手不足の状況をみると、人手不足感が高まっており、2018年3月調査では、全産業・製造業・非製造業のいずれもバブル期に次ぐ人手不足感となっている。

<雇用情勢の改善による影響>

完全失業率2.7%というのは、完全雇用の状態です。

これを踏まえて、国は失業対策から「労働者の健康の維持・増進」へと政策の重点を移しています。

 

労働者の健康に関する法令というと、労働安全衛生法が有名です。もともと労働基準法に規定されていた労働者の安全・衛生・健康といった内容が、労働基準法から分家して独立したのが労働安全衛生法です。

ですから、労働基準法に労働者の健康に配慮した規定は少ないのですが、働き方改革の一環として、こうした規定が増えることになりました。

年次有給休暇を取得させる義務、残業時間の上限規制などが、労働者の健康に配慮した規定です。

 

これらの規定には罰則がありますから、企業は無視できません。罰金は1人当たり30万円です。しかし、企業が義務を怠っておいて、摘発されたら罰金を支払えば良いというわけではありません。法令違反が摘発されれば、会社の評判は落ちますし、従業員は他社に逃げていきます。

正面から対応するには、まず、業務を減らすことが大事です。過去からの習慣で行っている業務や、経営者の自己満足のための業務は、最初に切り捨てるべきです。

 

<正社員の増加による影響>

働き方改革の中で、同一労働同一賃金ということが言われています。

仕事内容や異動の有無などに違いが無いのなら、同じ待遇(均等待遇)にしなさいということです。

また、正社員と短時間労働者や有期雇用労働者とで、仕事内容や異動の有無などに違いがあったとしても、その違いに応じた公平な待遇(均衡待遇)にしなさいということが、働き方改革関連法により強化されます。

 

政府の方針に逆らうことは、事業の継続に不利となりますから、大手企業を中心に非正規社員の正社員化や正社員の積極採用の動きが見られます。

実は「正社員」というのは法律用語ではありません。それぞれの会社が独自に定義を決めていたり、定義を決めていなかったりしているのです。

そして政府は、将来的に正規と非正規の区別をなくす方針ですから、これを見越して、正社員を増やす傾向は今後も続くでしょう。

 

<人手不足感の高まりによる影響>

「労働経済白書」の中でも、少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が、持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠であり、そのためには、資本への投資に加えて、人への投資を促進していくことが重要だとされています。

上司が部下を、先輩が後輩を育てる仕組みと、育てることが評価される仕組みを充実させましょう。これだけでも、一人ひとりの労働生産性が高まりますから、人手不足は解消に向かいます。

また、仕事を通じて成長するのは嬉しいものです。成長を実感できる会社では、社員の定着率も高まります。

採用難が続く中、採用の強化だけでなく、こうした施策についても再検討が求められているのです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一