働かせ方改革になっていませんか

働かせ方改革になっていませんか

<働き方改革の定義>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ労働生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ここで、労働生産性を向上させるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに働き手の欲求に反しますから、働き方改革にはなりません。

 

<企業にとっての働き方改革の目的>

政府としては、少子高齢化による労働力不足や消費の落ち込みを解消するために、何としても働き方改革を推進しなければなりません。

しかし、企業が働き方改革に取り組むのは、政府に協力することが目的ではありません。

求職者に「この会社で働きたい」と思わせること、従業員に「この会社で働き続けたい。貢献したい。自分が成長したい」と思わせること、従業員の家族をはじめ取引先や金融機関、そして何よりお客様に「この会社は良い会社だ」と思わせることが、本音の目的だと考えられます。

<働き方改革の手段>

上記の目的を果たすために有効な手段としては、次のようなものが挙げられます。

 

【労働時間の正確な把握】

 社内で把握可能な勤務時間はもちろんのこと、社外での勤務時間や持ち帰り仕事の時間も、可能な限り正確に把握する必要があります。

これは、すべての働き方改革の前提条件ですから、これを怠ると不平等や不公平が拡大して社員の不満が高まります。

 

【業務の削減】

 過去からの習慣で行っているだけの業務をやめる。経営者の満足のために行っているだけの業務をやめる。この2つでかなりの業務が削減されます。

加えて、仕事のダブりをなくす、時間帯や手順を変える、取引先との取り決めを見直す、システム化、機械化、外注化、上司や先輩から部下や後輩へのノウハウ伝授など、できることは意外に多いものです。

これも、すべての働き方改革の前提条件ですから、怠ると会社も従業員も無理を強いられて苦労することになります。

 

【残業時間の削減】

 業務が減れば、自然と残業時間は減っていきます。減らない従業員がいた場合には、その原因を究明して問題点を解消しなければなりません。特定の人に業務が偏っていたり、残業代が欲しくてあえて残業が増えるように立ちまわっていたりと、原因はさまざまです。

業務が減るペースを上回って残業時間が減る場合には、サービス残業や持ち帰り仕事が発生している可能性があります。

また、残業時間が減った分だけ、従業員の手取り額が減らないように、何らかの手当を支給する、賞与に上乗せするなどが必要です。収入が減って喜ぶ従業員はいません。

 

【年次有給休暇の取得率向上】

 平成31(2019)年4月以降は、企業側から積極的に年次有給休暇を取得させる義務が発生します。

業務の削減が進んでいけば、こうした法改正への対応も難しくはないでしょう。

ただ、労働基準法が1年間で5日以上と定めたからといって、一律に5日の年次有給休暇を取得させ、それ以上の休暇を取れない雰囲気にしてしまうのは本末転倒です。

法改正によって強制される日数を上回る年次有給休暇の取得を奨励するのが、本当の働き方改革です。

また、今回の法改正は、企業に時季指定義務を課したのだという説明も見られます。しかし、年次有給休暇はあくまでも労働者の権利ですから、権利者である従業員の意向を十分に反映して取得日を決定する必要があります。

 

【フレックスタイム制】

 平成31(2019)年4月より、清算期間の上限が1か月から3か月に延長されるのですが、使用者から労働者に業務内容の指示はできても、出勤日や始業・終業時刻の指示はできないという大原則に変更はありません。

業務に支障が出ないように、労働者同士で話し合って出勤日や勤務時間帯を決めたうえで、使用者に事前報告するというのが上手な運用の基本です。

あくまでも、生活と仕事の両立を目指し、労働生産性を高めるための制度ですから、結果として残業時間が減少したり年次有給休暇の取得が減ったりということはあっても、最初からそれを意図するというのは誤った運用になります。

 

<働かせ方改革にしないために>

会社の立場で、経営陣や人事部門が働き方改革を推進したつもりになっても、それが働き手の必要と欲求に反していれば、それは「働かせ方改革」になってしまいます。

これでは、働き方改革の目的は達せられません。

働き方改革の推進のためには、実施の前後に従業員の声を聞き、不満がないか不合理ではないかということを常にチェックする必要があるのです。

 

社会保険労務士 柳田 恵一