平成30(2018)年10月31日、厚生労働省が労働政策審議会の労働条件分科会に、働き方改革関連法で来年4月から導入される高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、具体的な対象業務の素案と導入する場合の企業の実務フローを示しました。
今後、この資料に沿って議論が進むことになります。
<対象となる業務の条件>
対象業務とされるには、次の条件を満たすことが必要です。
【対象業務の要件等】
・高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務であること。〔労働基準法41条の2 1項1号〕
・使用者は「始業・終業時間や深夜・休日労働など労働時間に関わる働き方についての業務命令や指示などを行ってはならない」「実際の自由な働き方の裁量を奪うような成果や業務量の要求や納期・期限の設定などを行ってはならない」。〔参議院厚生労働委員会附帯決議(平成30年6月28日)二十一〕 ・当該事業場における労使委員会が決議した業務であること。〔労働基準法41条の2 1項〕 |
<対象業務(素案)>
対象業務として、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務が示されています。
しかし、これらに含まれるすべての業務が高度プロフェッショナル制度の対象となるわけではなく、その範囲は以下に示すように限定されています。
【金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務】
・金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発の業務 |
【資産運用の業務、有価証券の売買その他の取引の業務】
・投資判断に基づく資産運用(指図を含む。)の業務(資産運用会社等におけるファンドマネージャーの業務)
・投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務(資産運用会社等におけるトレーダーの業務) ・証券会社等におけるディーラーの業務(自社の資金で株式や債券などを売買する業務) |
【有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務】
・有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務 |
【顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務】
・企業に対して事業・業務の再編、人事等社内制度の改革など経営戦略に直結する業務改革案などを提案し、その実現に向けてアドバイスや支援をしていく業務 |
【新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務】
・新たな技術の開発、新たな技術を導入して行う管理方法の構築、新素材や新型モデル・サービスの開発等の業務 |
まだ、厚生労働省から資料が提示された段階ではありますが、かなり高度に専門的な業務のみが対象とされることは分かります。
安易に高プロを導入できないのは、間違いないことのようです。
社会保険労務士 柳田 恵一