<雇用対策法>
雇用対策法という法律があります。
その目的は、第1条に示されています。
【雇用対策法の目的】
第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。
2 この法律の運用に当たっては、労働者の職業選択の自由及び事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならず、また、職業能力の開発及び向上を図り、職業を通じて自立しようとする労働者の意欲を高め、かつ、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努めなければならない。 |
第1項は、少子高齢化により労働力の不足が生じているので、労働力の需給が均衡するよう、国が政策を定め施策を講ずるとしています。
この目的のため、採用にあたって年齢制限を設けることは、原則として許されないということになります。
このことは、第10条に規定されています。
【募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保】
第十条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。 |
一部に分かりにくい表現を含んでいますが、労働者の募集と採用の際には、原則として年齢を不問としなければなりません。
これは、形式的に求人票や求人広告で「年齢不問」とすれば良いということではありません。
年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に不採用としたりすることは違法です。
また、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。
【違法な求人条件の例】
・ハードな重労働について40歳以下で募集
・若者向けの洋服の販売スタッフについて30歳以下で募集 ・PC操作や夜間業務の多い職種について若い人限定で募集 ・一定の経験が必要な指導業務について50歳以上で募集 |
<認められている例外>
合理的な理由により、例外的に年齢制限が許される場合があります。
例外的に年齢制限を行う場合は、法定の例外事由に該当する必要があります。
また、年齢の上限を定める場合には、求職者、職業紹介事業者等に対して、その理由を書面や電子媒体により提示することが義務づけられています。
ただし、年齢制限が65歳以上の場合には、対象外となっています。〔高年齢者雇用安定法20条1項〕
【例外となる場合】(雇用対策法施行規則1条の3 1項)
例外事由 1号 | 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合 |
例外事由 2号 | 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合 |
例外事由 3号 イ | 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合 |
例外事由 3号 ロ | 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合 |
例外事由 3号 ハ | 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合 |
例外事由 3号 ニ | 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合 |
これらの例外事由は、厳密に解釈されていますので、安易な拡張解釈は許されません。
例外事由を適切に提示しない事業主は、ハローワークから、報告の徴収、助言、指導等の措置を受けることがあります。〔18条の2 2項〕
また、例外事由を提示しない求人の申し込みは、ハローワークや職業紹介事業者から受理を拒否されることもあります。〔職業安定法5条の5ただし書〕
<年齢にとらわれない採用のために>
労働者の適性や能力は、年齢によって決まるものではありません。「高年齢者には柔軟性や協調性が欠ける」などの決めつけは、イメージに基づく不合理なものです。
年齢を基準にするのではなく、応募者の適性・能力に着目して採用を行うことが大事です。
社会保険労務士 柳田 恵一