免許保有を前提とする雇用の注意点

免許保有を前提とする雇用の注意点

<免許保有の前提>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

これらは、免許の保有を前提とする雇用に特有の問題です。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、この条文の基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 

タクシーの運転手や医師が免許を失っても、事務や営業など他の仕事ならできるでしょう。そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。

雇い入れ通知書という名称のこともあり、契約書の形をとることもあります。

これは罰則をもって使用者に義務付けられていますから、労働者側も労働条件を確実に確認できるわけです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが、客観的に見ても合理的だといえます。

なぜなら、解雇理由とすることについて、労働者側からの異議申し出がない限り、労使合意のうえでの解雇理由となるからです。

 

<証拠を残すことの重要性>

会社側の常識と労働者側の常識が違うことは、珍しいことではありません。

お互いの常識が合致して「暗黙の了解」だと思っていたことが、訴訟の場では「一方的な言いがかり」とされることも稀ではありません。

「暗黙の了解」があると思っていながら、労使紛争になった場合を想定して、合意を示す文書を作っておくことは、かなり面倒なことではあります。

しかし、無用な紛争の発生を防止するためにも、会社を守るためにも、広い意味での合意文書は積極的に作成・保管しておくことをお勧めします。

 

社会保険労務士 柳田 恵一