<具体的な事例>
いままでパート・アルバイトに仕事の指示を出し指導をしてきた課長が部長に昇進し、その下で働いていた正社員が課長に昇進します。
ところが、課長に昇進した正社員は、勤務中、毎日のように居眠りする姿を見られていて、パート・アルバイトの失笑を買っていた人物でした。
自分たちと似たり寄ったりの仕事をしていたように見えた正社員が、居眠りをしていたのに昇進して昇給するというのは、どうにも納得がいきません。
これを放置しておくと、パート・アルバイトが新課長を信頼できず、その指示・指導に素直に従わないことによって、生産性が大幅に低下してしまうかも知れません。
<立場による意識の違い>
時間給で働くパート・アルバイトは、どの時間を切り取っても一定の成果を上げるように意識して働いています。
ボーッとしていることは許されず、トイレに行くのも遠慮して急いでいます。
ましてや、堂々と居眠りなどできません。
一方、月給制で働く正社員は、より長期的な視点で成果を出そうとします。改善を求められるのは主に正社員ですし、結果を残さなければ、賞与の支給額や将来の出世にも影響します。
パート・アルバイトが仕事を終え帰宅した後も、正社員は遅くまで残って多岐にわたる仕事をこなしているために、疲れがたまって居眠りが出るということもあるでしょう。
こうした立場の違いから、不信感が生まれるというのは、ごく自然なことなのです。
<納得のいく説明>
正社員とパート・アルバイトの職務や責任の違い、そしてこれらを理由とする待遇の違いについては、きちんとした説明が必要です。
「働き方改革関連法」により、令和2(2020)年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されることになります。
この法律に対応し、「正規」と「非正規」の不合理な待遇差を埋めていくことはもちろん、社内で理解される説明が必要です。
これらを怠らなければ、労働者の間には公正に評価されているとの納得感が生じますし、納得感はモチベーション向上につながります。
また、求職者からは魅力ある職場と評価され、離職率の低下とあいまって、人材の確保につながります。
<説明できない場合>
なかには、正社員と非正規社員との間の待遇差を合理的に説明できない職場もあります。
どのように説明の仕方を工夫してみても、うまい説明が見つからないとすれば、そこには不合理な待遇差の存在が疑われます。
不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」の施行まで、あと1年を切りました。
今から、計画的に不合理な実態の解消を進めておく必要があります。
不合理な待遇差を発見するには、パート・アルバイトに聞き取り調査をするのが近道です。
パート・アルバイトから上がってくる待遇差の疑問に対し、すべて合理的な説明ができるのか、是非とも点検を進めていってください。
社会保険労務士 柳田 恵一