<欠勤控除>
欠勤控除とは、遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。
時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。
主に月給制の場合に問題となります。
また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。
<欠勤控除のルール>
欠勤控除について、労働基準法その他の法令に規定はありません。
しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。
この原則は、労働契約の趣旨(後掲の労働契約法第6条参照)から導かれるものです。
ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則や賃金規程に明記しておく必要はあります。
<基本給の欠勤控除>
基本給については、欠勤した日数・時間に比例して減額するのが一般です。
ただし、この減算方式によると、定められた計算式によっては、マイナスになってしまうことがあります。
基本給がマイナスというのは明らかに不合理ですから、欠勤が多い場合には、出勤した日数・時間に比例して基本給を加算する方法をとるのが一般です。
<手当の欠勤控除>
手当の欠勤控除についても、就業規則などに規定しておき、これに従って計算することになります。
客観的に見て不合理でなければ、各企業でルールを定めておけば良いのです。
ただし、たとえば年次有給休暇を取得すると不利益になるルールは、公序良俗に反するという理由で無効になる場合もあります。〔労働基準法第136条、民法第90条〕
考え方としては、その手当の性質や支給の趣旨に応じて、欠勤控除の計算方法を定めるのが良いでしょう。
<住宅手当の場合>
住宅手当を住宅費用の支出に対して支援する趣旨で支給している会社であれば、勤務日数・時間にかかわらず住宅費用は一定であると考えられますから、基本的には欠勤控除しないのが理論的です。
しかし、通勤の便を考えて、そこに居を構えていることに対する費用の一部を負担する趣旨で支給している会社であれば、出勤回数に応じて支給するのが理論的です。
どちらの趣旨も含んでいる会社であれば、間を取って、欠勤日数に応じて減額するというのも合理的です。
<役職手当の場合>
その責任や立場にあることの負担に対して、役職手当を支給する趣旨であれば、勤務日数・時間にかかわらず負担は一定であるとも考えられますから、欠勤控除しないのも合理的です。
しかし、勤務を通じて役職に応じた役割を果たすことの対価として、役職手当を支給しているのであれば、出勤回数に応じて支給するのが理論的です。
どちらの趣旨も含んでいる会社であれば、間を取って、欠勤日数に応じて減額するというのも合理的です。
<手当の見直し>
手当支給の趣旨を突き詰めていったら、現在の社会情勢からは合理性が疑われ、手当を廃止して基本給に合算することになったという場合もあります。
この場合、単純に手当を廃止するのは、不利益変更禁止の原則に反しますから、少なくとも調整給を設けるなどの措置が必要となります。
実際に、住宅手当や家族手当については、廃止する企業も増えています。
手当の欠勤控除を検討する際には、手当支給の趣旨を再確認することになりますから、この機会に、手当の新設・廃止も検討することをお勧めします。
【労働契約法第6条】
(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。 |
社会保険労務士 柳田 恵一