<法改正>
令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。
施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。
<パワーハラスメント対策の法制化>
職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。
【雇用管理上の措置の具体的内容】
・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
・苦情などに対する相談体制の整備 ・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等 |
より具体的なことは、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて検討される予定です。
また、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。
<職場におけるパワーハラスメント>
職場におけるパワーハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものとされました。
【パワハラの3要素】
1.優越的な関係を背景とした
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により 3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること) |
2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。
職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。
<職場の範囲>
「職場」とは業務を遂行する場所を指しますが、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含めることが指針で示される予定です。
(「労働政策審議会建議」では、このようにするのが適当とされています。)
たとえば、移動中の自動車や公共交通機関の中も「職場」に含められますし、出張中は出張先が「職場」ということになります。
<優越的な関係>
「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書」では、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることを指しています。
例えば、以下の場合も含むとされています。
・職務上の地位が上位の者による行為
・同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの |
部下が上司に何度もパソコンの使い方を教えているのに、上司が同じところでつまずき、部下が上司を馬鹿にするようなことがあれば、職場のパワーハラスメントに該当しうることになります。
パワハラの定義が法令に示されたことによって、パワハラ防止、相談体制の整備、加害者への対応、被害者へのケア、再発防止など、企業が広範囲にわたって大きく前進することが期待されます。
社会保険労務士 柳田 恵一