<企業の受動喫煙防止義務>
健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。
令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。
これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。
これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。
労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。
<法規制を上回る施策の実施>
法規制を超えて、敷地内や建物内の全面禁煙に踏み切る企業も増えています。
これらの根拠は、労働法上の施設管理権です。企業が社内秩序を定立する権限の一つとして認められるものです。
これは、場所を限定しての規制であり、健康増進法が対象施設に応じた規制をするのと軌を一にしています。
<時間的な喫煙制限>
ところが、場所の限定に加え、企業独自の基準で喫煙時間を制限する動きも出てきました。
公務員以外は、あまり強く意識されることが無いのですが、労働者は本来的に職務専念義務を負っています。
勤務時間中は、職務に専念し私的活動を差し控える義務です。
これを根拠として、企業は勤務時間中の喫煙を禁止できるものと考えられます。
なぜなら、喫煙によって、主観的にはともかく、客観的には生産性が低下すると思われるからです。
<喫煙の自由>
喫煙の自由が最高裁で争われたこともあります。
昭和45年の大法廷判決では、たばこが生活必需品とまではいえず、普及率の高い嗜好品に過ぎないのだから、あらゆる時間、あらゆる場所で喫煙の自由が保障されるものではないという趣旨が述べられています。
本来は自由であるはずの喫煙も、他社に危害を与えうる危険との関係では、大幅に制限されうるということになります。
社会保険労務士 柳田 恵一