<令和元年度補正予算案>
令和元(2019)年12月13日、政府は令和元年度補正予算案を閣議決定しました。
これは、次の4つの経済対策のために編成されています。
1.災害からの復旧・復興(2兆3,086億円)
2.経済の下振れリスク対応(9,173億円)
3.東京2020後を見据えた景気活性化策(1兆771億円)
4.その他(392億円)
以下、経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援として、厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示しているものをご紹介します。
<厚生労働省関連(一部抜粋)>
【中小企業・小規模事業者の生産性向上の支援(14億円)】
最低賃金の引上げや被用者保険の適用拡大等を踏まえ、生産性向上に資する設備投資等に対する助成の拡充を行い、最低賃金引上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援するとともに、中小企業等において、被用者保険の適用に当たり、労働者への丁寧な説明等を行えるよう、事業者を対象とした説明会等による周知や専門家の活用支援等を行う。
【生活衛生関係営業者の生産性向上の支援(2.8億円)】
生活衛生関係営業者の生産性向上を支援するため、個別相談やセミナーを実施するとともに、経営改善に役立つ情報提供や経営診断ツール等により、経営力底上げを図る。
【介護事業所における生産性向上の推進(1.5億円)】
介護現場の生産性向上の推進に向けて、各自治体の先進的な取組を収集し、介護現場の生産性向上に関するモデル事例の全国への普及・展開を図る。
【就職氷河期世代への支援(18億円)】
就職氷河期世代を支援するため、ハローワークに専門窓口の設置を進め、就職から職場定着まで一貫した支援を実施するほか、トライアル雇用を行う事業主、正社員として雇い入れ定着させた事業主等への助成金の拡充等、技能修得期間における生活福祉資金の貸付を行う新しいメニューの創設等により、就職氷河期世代の正社員雇用や就労を支援する。また、市町村におけるひきこもり支援を強化するため、ひきこもり支援施策の前提となる調査研究に要する経費や広報経費について補助を行う。
<経済産業省関連(一部抜粋)>
【中小企業生産性革命推進事業(3,600億円)】
中小機構が複数年にわたり中小企業の生産性向上を継続的に支援する「生産性革命推進事業」(仮称)を創設。設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施。
よろず支援拠点等の支援体制を充実するほか、生産性及び省エネ性能の高い設備更新を支援。
【事業承継の円滑化(64億円)】
事業承継時に経営者保証の解除を促進するため、専門家による支援を実施。
事業承継ネットワークによるプッシュ型支援、事業承継補助金による後継者の経営革新等の支援等を実施。
【海外展開企業の事業円滑化(60億円)】
TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定等を踏まえ、地域の中堅・中小企業による海外需要の取り込み活動等を支援。
世界市場(グローバル)に地方の中堅・中小企業等(ローカル)が直接製品等を提供するグローカルな取組等を促進。
(情報提供・相談体制整備、新輸出大国コンソーシアムによる支援、越境ECの活用、コンテンツの海外展開支援等)
【イノベーションの担い手の輩出(75億円)】
大企業等からの人材開放も含め、スタートアップ立ち上げ活動等を支援。また、アジアの新興国企業と共創し、社会課題解決に資する新事業創出(アジアDX)を推進。
産総研のAIクラウドシステムを拡充。また、公設試・大学等による先端設備の導入、人材育成事業を支援。
<経済の下振れリスク対応>
厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示している経済の下振れリスク対応は、その性質上、中小企業に限定されたものもあります。
生産性向上策や海外需要の取り込みの点で、中小企業だけが支援されることについては、大企業にとっての脅威だと捉えるべきでしょう。
今後は、大企業が生産性向上や海外需要の取り込みに、より積極的に取り組む必要があります。
また大企業は、就職氷河期世代の採用と教育にも社会的責任を負っています。
人材不足への対応と生産性向上のため、大企業には、就職氷河期世代の採用と職場定着のための教育に、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
社会保険労務士 柳田 恵一