<就業規則に矛盾が発生する場合>
会社が初めて就業規則を作成し、労働基準監督署長に届出る場合には、大変慎重になりますから、厚生労働省のひな形を参考にしたり、社労士(社会保険労務士)に依頼したりで、矛盾の無いものを作成しようとします。
ところが、法改正や社会情勢により、あるいは社内の運用が変わって、就業規則を改定する場合には、1か所ばかりに気を取られて、関連する部分のすべてを改定できずに終わってしまうということがありがちです。
参照条文がズレるなどは、その典型例です。
こうして、就業規則の中に矛盾が生じてしまいます。
<事務的に直してよい矛盾>
部署名や役職名など、変更されたにもかかわらず、一部の表記が古いままという場合には、これを事務的に修正しても問題ありません。
また、矛盾する2つの規定のうち、どちらか片方に統一しても、あらゆるケースを想定した場合に、適用される労働者の誰にも不利益をもたらさない場合には、きちんと就業規則改定の手続きを踏む限り、特に問題はありません。
<解消に手間のかかる矛盾>
ある条文によれば会社側に有利、別の条文によれば労働者側に有利という形での矛盾がある場合、これを解消することについては慎重になるべきです。
この場合には、解釈が分かれないように条文の表現を工夫する必要があります。
もちろん、就業規則改定の手続は必要です。
困るのは、正しく解釈しても矛盾を含んでいる場合です。
この場合には、基本的には労働者側に有利なほうに統一することになります。
ただし、時代に合わないとか、運用が困難であるなどの理由があって、会社側に有利なほうに統一するのが合理的といえる場合には、例外的にそうします。
このときにも、就業規則改定の手続きが必要です。
このことは労働契約法第10条本文に次のように規定されています。
【就業規則による労働契約の内容の変更】
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。 |
この条文の解釈は、客観的に行われなければなりません。
社労士(社会保険労務士)など、外部の専門家に判断を仰ぐなど、客観性が保たれる対応をお勧めします。
社会保険労務士 柳田 恵一