月: 2020年5月

勤務間インターバル制度とその効果

勤務間インターバル制度とその効果

令和2年3月30日、厚生労働省が、勤務間インターバル制度導入の参考資料として、「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル(全業種版・IT業種版)」を作成し公表しました。

これに沿って、勤務間インターバル制度とその効果の概要を示します。

 

<勤務間インターバル制度>

勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上のインターバル時間(休息時間)を確保する仕組で、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するうえで有効な制度です。

インターバル時間は、業務から離れて自由に過ごせる点で、休憩時間と同じ性質を持っていますが、業務の合間の休憩時間と区別するため、インターバル時間という用語が用いられます。

平成31(2019)年4月1日より、労働時間等設定改善法により、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。

働き方改革の一環で労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が導入されました。

しかし、この規制は、1か月間、1年間という長期間の労働時間の合計についてのものであり、特定の日に長時間労働となり十分なインターバル時間が取れないという問題を解消できません。ここに、勤務間インターバル制度の導入が求められる理由があります。

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令和2年4月1日の労働基準法改正

令和2年4月1日の労働基準法改正

令和2年4月1日付で、民法の債権に関する規定が改正されたことに対応して、労働基準法も改正されました。

 

<賃金請求権の消滅時効期間>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

改正前の民法では、賃金請求権の消滅時効期間が1年間でした。

これでは、労働者の権利保護が不十分だということで、労働基準法によって2年間に修正されていました。

ところが、改正民法では消滅時効期間が原則5年間とされたため、労働基準法との間で逆転が生じてしまうことになりました。

このままだと、労働基準法の労働者保護の趣旨に反してしまうので、段階的に消滅時効期間を延長し、民法の原則に合わせることとなりました。

実際の改正民法では、債権の消滅時効が次のように規定されています。

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実質残業代ゼロは違法

実質残業代ゼロは違法

<実質残業代ゼロ>

東京の大手タクシー国際自動車(kmタクシー)では、残業代が増えるほど、それに合わせて歩合給が引かれ、結局同じ額の給与となる仕組が取られていました。

ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていましたが、歩合給を計算するときに、残業代相当額などが差し引かれて、「実質残業代ゼロ」の状態になっていたのです。

この制度の導入にあたっては、ドライバーの約95%が加入する最大組合も了承していました。

ところが、別の少数組合のドライバーが、こうした制度は未払残業代を発生させるものであり違法だとして提訴しました。

 

<東京高裁の判断>

高等裁判所では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が支給されていることなどから、制度を合法と解釈していました。

手続面を含め、手当の名称や算定方法などから、形式的な判断が行われていたわけです。

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決して杓子定規ではない労働基準法の解釈適用

決して杓子定規ではない労働基準法の解釈適用

<通達の発出>

令和2年3月17日、厚生労働事務次官が、都道府県労働局長に宛てて依命通達(令和2年3月17日厚生労働省発基0317第17号)を発出しました。

これは、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響から、中小企業・小規模事業者で労働基準関係法令への対応が困難となる状況が発生していることを受け、中小企業等に与える影響への配慮の徹底を指示するものです。

直接的には、中小企業への配慮を依頼する内容となっていますが、労働基準法の解釈・適用について、実態を踏まえた柔軟な対応をなしうることを示しているもので、大企業にとっても参考になるものです。

具体的には、次の事項を指示しています。

 

<中小企業等への配慮>

・中小企業等に対する相談・支援にあたっては、労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、新型コロナウイルス感染症の発生および感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組みが行われるよう、きめ細かな対応を図ること。

・中小企業等の置かれた状況に応じ、時差出勤やテレワークについて必要な周知等を行うこと。

ポイント:法令違反があっても、必要な知識を与え、自主的な改善を求める。

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治療と仕事との両立支援を行うための環境整備

治療と仕事との両立支援を行うための環境整備

<ガイドラインの公表>

令和2年3月18日、厚生労働省が「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン令和2年3月改訂版」を公表しました。

これは、がん、脳卒中などの疾病を抱える方々に対して、会社が適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と仕事が両立できるようにするためのものです。

ここでは、両立支援を行うための環境整備(実施前の準備事項)について、中心的な部分の概要をご紹介いたします。

 

<事業者による基本方針等の表明と労働者への周知>

衛生委員会等で調査審議を行った上で、事業者として、治療と仕事の両立支援に取り組むに当たっての基本方針や具体的な対応方法等の事業場内ルールを作成し、全ての労働者に周知することで、両立支援の必要性や意義を共有し、治療と仕事の両立を実現しやすい職場風土を醸成します。

会社として、本気で取り組む姿勢を示すことによって、社内での意識を変革することができるようになります。

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休職後の軽易な作業での復職

休職後の軽易な作業での復職

<問題となるケース>

私傷病で休職していた社員が、元の職務で復職することは困難だが、軽易な作業であればすぐにでも復職できるとして、復職を希望した場合に、会社がこれに応じるべきかが問題となります。

休職中に無収入であったり、傷病手当金の受給だけであったりすれば、1日でも早く復職したいということもあります。

また、就業規則に定められた休職期間の満了が迫っていれば、復職できないことによって、退職せざるを得なくなりますから切実です。

一定の期間、軽易な作業に従事した後は、元の職務に戻ることができるという見込みの場合もあります。

いずれの場合にも、その旨の診断書が出されることもあり、会社がこれに従うべきなのか、判断に迷うところです。

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エイジフレンドリーガイドライン

エイジフレンドリーガイドライン

<エイジフレンドリーガイドライン>

令和2年3月16日、厚生労働省が「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を公表しました。

このガイドラインは、60歳以上の労働者の労働災害発生率が高くなり、2018年には休業4日以上の死傷者のうち26.1%が60歳以上となっている現状と課題を受け、高齢者が働きやすい職場環境の実現に向けた労使の取組みを促進するために策定されました。

事業者に求められる取組みとして、次の5つが示されています。

 

<安全衛生管理体制の確立等>

・経営トップ自らが、高齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明すること。

・高齢者労働災害防止対策に取り組む組織や担当者を指定する等により、高齢者労働災害防止対策の実施体制を明確化すること。

・安全衛生委員会等、人事管理部門等において高齢者労働災害防止対策に関する事項を調査審議すること。

・身体機能の低下等による労働災害の発生リスクについて、危険源の洗い出しを行い、リスクアセスメントをすること。

・リスクアセスメントの結果を踏まえ、年間推進計画を策定、取組みを実施し、計画を一定期間で評価し、必要な改善を行うこと。

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新型コロナウイルス感染症と傷病手当金

新型コロナウイルス感染症と傷病手当金

令和2年3月6日、新型コロナウイルス感染症に関わる傷病手当金の支給について、厚生労働省保険局保険課から全国健康保険協会に宛てて、事務連絡文書が発信されています。

 

<感染者の傷病手当金>

健康保険加入者(被保険者)が新型コロナウイルス感染症に感染し、療養のため労務に服することができない場合には、傷病手当金の対象となります。

つまり、他の病気やケガと同様に、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、労務に服することができない期間、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額が、傷病手当金として支給されます。

例外的に業務によって感染した場合には、傷病手当金の対象とはならず、労災保険給付の対象となります。

 

<自覚症状の有無>

検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合には、たとえ自覚症状が無いときでも、傷病手当金の支給対象となりえます。

反対に、「新型コロナウイルス陽性」と判定されていない場合でも、医師が診察の結果、被保険者の既往の状態を推測して初診日前に労務不能の状態であったと認め、意見書に記載したときには、初診日前の期間についても労務不能期間となりえます。

今回の新型コロナウイルス感染症では、次のような症状があるため被保険者が自宅療養を行っていた期間は、療養のため労務に服することができなかった期間に該当することとなります。

・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

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兼業禁止規定の有効性

兼業禁止規定の有効性

<働き方改革の流れ>

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。

そして、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。

 

<兼業禁止規定の存在>

働き方改革の流れにもかかわらず、兼業禁止規定が就業規則に残っているケースも多々あります。

こうした規定は、政府の方針に沿うものではありませんが、その存在自体が許されないものではなく、各企業が必要性を認めて残しておくことは問題ありません。

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目標不達成で解雇という約束は有効か

目標不達成で解雇という約束は有効か

<解雇の有効性についての判断基準>

解雇の有効性の判断基準について、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16 条〕

この規定は、裁判所が判断を下すのに使った理論が条文となったものですから、その趣旨は様々な形で解雇の有効性の判断基準にあらわれます。

 

<解雇の理由が無ければ>

まず、解雇の理由(事由)は、就業規則に必ず記載する事項とされています。〔労働基準法第89条第3号〕

つまり、就業規則に規定の無い理由で解雇することはできません。

また労働者が、解雇の予告をされた日から退職する日までの間に、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。〔労働基準法第22条第2項〕

ですから、使用者が就業規則に規定の無い理由で労働者を解雇した場合には、労働者に有利な証拠書類を交付することになってしまいます。

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