<チェックリストの公表>
厚生労働省は、令和2年8月7日、労使団体や業種別事業主団体などの経済団体に対し、改訂された「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」などを活用して職場における感染予防、健康管理の強化を図ることを、傘下団体などに向け周知するよう、再度協力を依頼しました。
令和2年4月17日、5月14日に引き続き3回目となる今回の協力依頼は、新型コロナウイルス感染症対策分科会での提案を踏まえたものです。
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は全国的に増加傾向にあり、一部地域では感染拡大のスピードが増しています。
このため、新型コロナウイルス感染症対策分科会では、新規感染者数を減少させるための迅速な対応として、事業者に対して、①集団感染(クラスター)の早期封じ込め、②基本的な感染予防の徹底が提案されました。
「チェックリスト」では、「感染予防のための体制」「配慮が必要な労働者への対応等」の2分野で新たな項目が追加されています。
<感染予防のための体制>
・事業場のトップが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に積極的に取り組むことを表明し、労働者に対して感染予防を推進することの重要性を伝えている。 ・事業場の感染症予防の責任者および担当者を任命している(衛生管理者、衛生推進者など)。 ・会社の取組みやルールについて、労働者全員に周知を行っている。 ・労働者が感染予防の行動を取るように指導することを、管理監督者に教育している。 ・安全衛生委員会、衛生委員会等の労使が集まる場において、新型コロナウイルス感染症の拡大防止をテーマとして取り上げ、事業場の実態を踏まえた、実現可能な対策を議論している。 ・職場以外でも労働者が感染予防の行動を取るよう「新しい生活様式」の実践例について、労働者全員に周知を行っている。 ・新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を周知し、インストールを労働者に勧奨している。 |
事業場トップは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止について、具体的な方針を示さなければなりません。
ただ「積極的に取り組む」とだけ表明したのでは、かえって現場の混乱をもたらすからです。
なお、衛生管理者は50人以上、衛生推進者は10人以上の職場で選任が義務付けられています。〔労働安全衛生法第12条、第12条の2〕
<配慮が必要な労働者への対応等>
・風邪症状等が出た場合は、「出勤しない・させない」の徹底を全員に求めている。 ・社内での健康相談窓口の周知とともに、「新型コロナウイルス感染症についての相談の目安」や最寄りの「帰国者・接触者相談センター」を全員に周知している。 ・高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、慢性呼吸器疾患、高血圧、がんなど)を有する者などの重症化リスク因子を持つ労働者および妊娠している労働者に対しては、本人の申出および産業医等の意見を踏まえ、感染予防のための就業上の配慮(テレワークや時差出勤等)を行っている。 ・特に妊娠中の女性労働者が、医師又は助産師からの指導内容について「母健連絡カード」等で申し出た場合、産業医等の意見も勘案の上、作業の制限または出勤の制限(在宅勤務または休業をいう)の措置を行っている。 ・テレワークを行う場合は、業務とプライベートの切分けに留意し、上司や同僚とのコミュニケーション方法を検討し、在宅勤務の特性も理解したうえで、運動不足や睡眠リズムの乱れやメンタルヘルスの問題が顕在化しやすいことを念頭において就業させている。 |
発熱については、当初、37.5℃が基準とされていました。
しかし、平熱は個人差が大きく、感染者の症状の現れ方にも差があることから、こうしたデジタルな基準は撤回されています。
また、感染症拡大の防止のためには、日常生活での対策も必要となりますが、テレワーク時に限らず、プライベートへの過干渉とならないように配慮が求められます。
職場での新型コロナウイルス感染症拡大防止では、明確な方針のもとでの、周知と教育の徹底がポイントとなります。
社会保険労務士 柳田 恵一