月: 2020年10月

給与所得控除額の変更(令和2年度年末調整)

給与所得控除額の変更(令和2年度年末調整)

<給与所得控除後の金額>

「給与所得控除後の金額」は、給与所得のことをいい、計算式で示すと次のようになります。

給与所得(給与所得控除後の金額)= 支払金額(年収)- 給与所得控除

給与所得控除というのは、サラリーマンの必要経費にあたるもので、収入に応じた一定額を課税の対象から控除するものです。

給与所得控除額は、支払金額(年収)に応じて計算されます。

給与所得控除額が多いほど、課税対象額が減少しますから、所得税も少なくなる計算になります。

この給与所得控除額の計算式が、税制改正により時々変わるため、年収などに変更がなくても、所得税額が増減することがあるわけです。

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在宅勤務と通勤手当

在宅勤務と通勤手当

<通勤手当の性質>

労働基準法などに、使用者の通勤手当支払義務は規定されていません。

むしろ法律上、通勤費は労働者が労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担することになっています。〔民法第485条〕

ただし、就業規則や雇用契約などで通勤手当の支給基準が定められている場合には、賃金に該当するとされています。〔昭和22年9月13日発基第17号通達〕

さて、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、在宅勤務の機会が増大しました

在宅勤務では、通勤の費用がかかりませんから、毎月の通勤手当を定額で支給している場合には、その妥当性に疑問が生じます。

<就業規則の解釈>

通勤手当について、厚生労働省のモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

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メトロコマース事件最高裁判決(令和2年10月13日)

メトロコマース事件最高裁判決(令和2年10月13日)

<判例の効力>

判決の先例としての効力は、「判決理由中の判断であって結論を出すのに不可欠なもの」に生じます。

決して、結論部分に効力が生じるものではありません。

最高裁が、特定の判決の中で、「契約社員に退職金を支給しなくても良い」と述べたとしても、すべての企業で契約社員に退職金を支給する必要が無いと判断されたわけではありません。

<事件の争点>

改正前の労働契約法第20条は、次のように定めていました。

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

改正前労働契約法第20条は、民事的効力のある規定です。

法の趣旨から、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件を比較したときに、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、バランスが取れていなければなりません。

「不合理と認められる」相違のある労働条件の定めは無効とされ、不法行為(故意・過失による権利侵害)として損害賠償請求の対象となり得ます。

この事件では、退職金の相違が、バランスを欠き不合理ではないかが争点となりました。

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大阪医科大学事件最高裁判決(令和2年10月13日)

大阪医科大学事件最高裁判決(令和2年10月13日)

<判例の効力>

判決の先例としての効力は、「判決理由中の判断であって結論を出すのに不可欠なもの」に生じます。

決して、結論部分に効力が生じるものではありません。

最高裁が、特定の判決の中で、「アルバイト職員に賞与を支給しなくても良い」と述べたとしても、すべての企業でアルバイトに賞与を支給する必要が無いと判断されたわけではありません。

<事件の争点>

改正前の労働契約法第20条は、次のように定めていました。

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

改正前労働契約法第20条は、民事的効力のある規定です。

法の趣旨から、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件を比較したときに、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、バランスが取れていなければなりません。

「不合理と認められる」相違のある労働条件の定めは無効とされ、不法行為(故意・過失による権利侵害)として損害賠償請求の対象となり得ます。

この事件では、賞与、私傷病による欠勤中の賃金、夏期特別有給休暇の相違が、バランスを欠き不合理ではないかが争点となりました。

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押印省略

押印省略

<印鑑の盗用>

会社の中で、勝手に上司の印鑑や代表印を捺せば、問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、勝手に他人の印鑑を使って文書を作成すれば、犯罪となることもあります。

【刑法第159条第1項:私文書偽造等】

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

これは、印鑑に対する世間一般の信頼を保護するための規定です。

<署名の偽造>

同様に、会社の中で、勝手に上司や代表者の署名を偽造すれば、やはり問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、上に示した刑法の条文も、「印章」と「署名」を同等に扱っています。

こうしたことからすると、署名に対する世間一般の信頼も保護されており、必ずしも印鑑にこだわる必要はないといえます。

実際、国や地方公共団体から「押印廃止ガイドライン」「押印見直しガイドライン」などが相次いで出され、行政手続での押印省略が進んできました。

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代休の付与

代休の付与

<代休制度>

労働基準法などに、代休についての規定はありません。

したがって、会社は労働者に代休を与える義務が無く、労働者には会社に代休を請求する権利が無いということになります。

つまり、会社が労働者に休日出勤をさせたとしても、後から代わりの休日を与えなくてもよいわけです。

<割増賃金の支払義務>

これだけで話が終わってしまうと、労働者は休日に働き損になってしまいます。

そうならないために、会社は労働者に対して割増賃金を支払う義務を負っています。〔労働基準法第37条第1項本文〕

たとえば、1日8時間労働で平日に5日勤務し、所定休日の土曜日に勤務した場合には、週40時間を超える土曜日の労働時間が、25%以上の割増賃金の対象となります。

法定休日の日曜日に勤務した場合には、35%以上の割増賃金の対象となります。

つまり、125%以上、135%以上の賃金支払が必要となります。

もちろん、所定休日や法定休日は、各企業の就業規則の定めに従います。

これらの割増賃金は、「代休を与えるから支払わなくてもよい」ということにはなりません。

支払わなければ、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。

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完全月給制

完全月給制

<完全月給制の定義>

「完全月給制」という言葉は、欠勤控除をしない月給制、つまり、「遅刻、早退、終日の欠勤があっても、減額せず一定の月給を支払う給与支払制度」の意味に使われるのが一般です。

しかしこれは、法律用語ではないため法令による定義はなく、会社ごとに就業規則などでその内容が定められています。

その内容が、会社ごとに定められているだけに、違法な運用が行われるリスクがあります。

<サービス残業の可能性>

欠勤控除が無いのは、労働者にとって有利ですから、この点については違法性がありません。

しかし、月給の定額支給ということが強調される余り、時間外労働などに対する賃金が支払われないとなると、違法なサービス残業が発生するリスクがあります。

このことから、完全月給制の対象者は、時間外労働、休日労働、深夜労働の無い労働者である場合が多いと考えられます。

法定時間外労働などに対する割増賃金が発生しない労働者としては、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」が挙げられます。〔労働基準法第41条第2号〕

その範囲は、行政通達により限定的に解釈されていますから、就業規則などで任意に定義することはできません。

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パートへの退職金支給義務

パートへの退職金支給義務

<同一労働同一賃金>

働き方改革関連法の一環で、令和2(2020)年4月から同一労働同一賃金への対応が求められています。〔パートタイム・有期雇用労働法〕

なお、中小企業では1年遅れの令和3(2021)年4月の施行となります。

同一労働同一賃金は、退職金もその対象となります。

しかし、パート社員にも、正社員と同様の退職金を支給しなければならないということではなく、各企業で退職金を支給する趣旨との関連から、パート社員にも正社員と同じ基準で支給しなければならない場合、異なる基準で支給すれば良い場合、支給しなくても良い場合に分かれます。

いずれの場合でも、パート社員から正社員との処遇の違いの理由を問われたなら、会社は明確に説明する義務を負っています。

説得力をもって、きちんと説明できない場合には、訴訟トラブルに発展するリスクがありますから、具体的なQ&Aを作成するなど、十分な準備が必要となります。

<退職金を支給する理由>

退職金を支給する企業は、全体の約8割といわれます。

企業が退職金を支給する一般的な理由としては、賃金の後払い、退職後の生活保障、企業責任、企業慣習、手切れ金、独立資金、功労報償、成果配分など様々なことが言われています。

しかし、就業規則や退職金規程に退職金を支給する具体的な理由が明示されているのは、むしろ少数派ではないでしょうか。

企業の説明義務との関連から、退職金を支給する理由については、就業規則や退職金規程に規定しないまでも、明確にしておく必要はあります。

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障害年金の納付要件

障害年金の納付要件

<障害年金と初診日>

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求対象となります。

このことから、障害年金を受け取ろうとする場合には、初診日を証明する必要があります。

障害年金は障害の程度により、障害基礎年金が1級と2級、障害厚生年金が1級から3級に区分されて支給されます。

<納付要件>

障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間について、保険料が納付または免除されていること(令和8年3月31日までに初診日がある場合)

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これって申請書?

これって申請書?

<申請の意味>

会社の中で「申請」というのは、労働者が自分の希望を申し出て、会社の許可を得ようとする行為です。

会社からの命令に応じて行う業務や、労働者としての権利の行使は、会社の許可を必要とするものではありませんから、申請の対象とはならない筈です。

<出張申請書>

自ら出張を希望して、出張申請書を起案し上司に提出するということもあるでしょう。

役職者であれば、出張の必要性を判断する権限を与えられていることもあるからです。

しかし、担当者であれば上司から出張命令を受けるのが一般です。

この場合でも、その担当者は出張申請書を起案します。

出張申請書を起案するのは、出張したいからではなく、出張の目的や業務内容、交通手段、経費などを明らかにして、会社の決裁を得るためです。

出張そのものは上司からの命令であっても、出張の具体的な内容については、上司を通じて会社の決裁を得る必要があるので出張申請書を起案するのです。

出張を終えて帰社すれば、出張申請書の内容との差異や、出張の効果を明らかにするために、出張報告書を提出するのが一般です。

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