月: 2021年3月

会社で起こる保険金詐欺

会社で起こる保険金詐欺

<保険金詐欺>

保険金詐欺は、刑法第246条に規定されている詐欺罪に該当します。

保険金詐欺として逮捕される可能性がある行為としては、自動車保険で、偽装の自損事故や盗難を偽装して車両保険を請求する、偽装の自損事故で人身傷害保険や搭乗者傷害保険を請求する、本当はケガをしていないのにケガをしているふりをして対人や人身傷害保険を請求するなどが見られます。

しかし、会社が加担する保険金詐欺もあるのです。

<雇用保険の詐欺>

採用が内定すれば「失業」の状態は解消されます。

それにもかかわらす、内定が無いものとして、失業手当(求職者給付の基本手当)や再就職手当について受給があれば保険金詐欺になります。

基本手当については、請求手続に会社が関与しませんので、責任を問われることはありませんが、調査が入れば対応する義務を負います。

再就職手当については、会社が主体的に手続に関与しますから、ここで不正を働けば保険金詐欺への加担について責任を負わされます。

“会社で起こる保険金詐欺” の続きを読む
労働条件自主点検表

労働条件自主点検表

<自主点検表>

自主ですから「自社はどうなのか」ということで、自己点検に用いるのが本来の趣旨です。

しかし、所轄の労働基準監督署から送られてきて、自己点検を迫られることがあります。

「この点検表は、御社の労務管理が労働基準法等に照らして問題ないかを自ら点検し、問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただくためのものです。それぞれの設問の回答のうち、御社に当てはまるものを選んでください」という、やんわりとした説明が加えられています。

しかし、「自主点検した結果は、別紙「労働条件に関する自主点検結果報告書」に転記の上、同封の返信用封筒を用いて◯月◯日までに、御返送いただきますようお願いします」ということになっていますから、決して自主的なものではありません。

<労働基準監督署の監督>

自主点検結果に違法な項目があれば、所轄の労働基準監督署から立入調査(臨検監督)が入ります。

「問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただく」ということですから、自主点検結果報告書を提出してから一定の期間を経過していれば、改善済みになっている筈という建前です。

改善が滞っていれば、当然に行政指導が入ります。

指導が入れば、これに対して改善内容の報告をする義務があります。

かといって、自主点検結果報告書の提出を怠っても立入調査の対象となりますし、虚偽の報告に対しては罰則の適用もありえます。

“労働条件自主点検表” の続きを読む
同一労働同一賃金と過料

同一労働同一賃金と過料

<同一労働同一賃金の性質>

同一労働同一賃金は、働き方改革の一環として取組むべき課題とされています。

そして、企業に義務付けられている内容は、パート有期労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)に定められています。

この法律に違反した場合でも、労働基準法のように懲役や罰金といった刑罰が適用されるわけではなく、労働者側から企業側に損害賠償を請求する形で、金銭解決が図られることになります。

しかし、全くペナルティーが定められていないわけではなく、行政罰としての過料が定められていることには注意が必要です。

<10万円以下の過料>

労働基準法第15条第1項には、一定の労働条件の明示が定められています。

違反には30万円以下の罰金も定められています。

さらに、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際、労働基準法で定める事項のほか、特定事項と呼ばれる4つの項目「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を文書等により明示しなければなりません。〔パート有期労働法第6条第1項、同法施行規則第2条〕

違反には10万円以下の過料が定められています。

4つの特定事項のうち忘れがちなのは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」です。

漏れなく明示するには、厚生労働省が公表している労働条件通知書(有期雇用型)のひな形の最新版を利用するのが良いでしょう。

また「相談窓口」を人事課の担当者など社内の人にすると、非正規労働者からは敬遠され、なかなか相談してもらえず、不満が大きくなって、いきなり弁護士に相談されてしまうということが起こりがちです。

パワハラ、セクハラなどの相談窓口と併せて、社外の専門家として顧問の社会保険労務士を指定したほうが安全です。

“同一労働同一賃金と過料” の続きを読む
暴言を吐かれ暴力を振るった社員の懲戒

暴言を吐かれ暴力を振るった社員の懲戒

<反撃の懲戒処分>

職場で上司から暴言を吐かれ、これに対抗して暴力を振るった社員の処分は、どう考えたら良いでしょうか。

繰り返される上司のパワハラに対抗する行為であって、部下が堪りかねて行ったのであれば、心情的には不問に付すか、情状酌量で軽い処分にとどめたいと感じます。

懲戒処分は就業規則の規定を適用して行うものですから、就業規則の規定にある「情状酌量」などの解釈の問題となります。

<正当防衛の可能性>

これを法的観点から見ると、上司の暴言は侮辱または名誉毀損に該たります。〔刑法第230条、第231条〕

部下の暴力は暴行罪、ある程度のケガをさせていれば傷害罪に該たります。〔刑法第208条、第204条〕

そして部下の行為が、刑法上、罪を軽減されるとすると、正当防衛が根拠になると思われます。〔刑法第36条第1項〕

「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」という規定です。

このように刑法の正当防衛は、犯罪から自分や他人の身を守るために、やむを得ず行った行為のことをいいます。

しかし、正当防衛の成立要件は思いの外厳格です。

今回のケースでは、相当性の要件を満たしていません。

相当性の要件というのは、侵害の危険を回避するための行為が、必要最小限のものであることです。

暴言を封じるのに、暴力を振るうというのは、必要最小限のやむを得ない行為とはいえません。

“暴言を吐かれ暴力を振るった社員の懲戒” の続きを読む
「常識」を巡る社内トラブル

「常識」を巡る社内トラブル

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

“「常識」を巡る社内トラブル” の続きを読む
労働法の遵守レベル

労働法の遵守レベル

<労働法の遵守レベル>

労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、パート有期労働法、育児介護休業法など、企業が遵守すべき労働法の範囲は、驚くほど広くなっています。

労働法の遵守を監視するのは、主に労働基準監督署の役割です。

だからと言って、すべての企業に対し、直ちに完璧に遵守するよう求めてはいません。

労働基準監督署の労働基準監督官は、労働基準監督官行動規範に則り行動することになっています。

この行動規範の中の「中小企業等の事情に配慮した対応」という項目では、次のように述べられています。

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

裏を返せば、大企業では、その社会的責任から法令遵守が徹底されていなければならないということになるでしょう。

以下、私の関わってきた企業の実態を参考に、労働法の遵守レベルを示してみたいと思います。

下に行くほど、高い遵守レベルであるとは言えるのですが…

“労働法の遵守レベル” の続きを読む
退職勧奨(退職勧告)に応じた意思表示の取消

退職勧奨(退職勧告)に応じた意思表示の取消

<本来は自由な退職勧奨>

「退職勧奨」と「退職勧告」は厳密に区別されず、ほとんど同視されています。

「勧奨」は、勧めて励ますことです。

「退職勧奨」の例としては、「あなたには、もっと能力があると思います。たまたま、この会社が向いていないだけです。他の会社では実力を発揮できるでしょう。退職について真剣に考えてみてください」といった内容になります。

「勧告」は、ある事をするように説いて勧めることです。

「退職勧告」の例としては、「入社以来ミスが多いことは、あなた自身も残念に思っているでしょう。まわりの社員も、ずいぶん親切に丁寧な指導をしてきましたが、これ以上はむずかしいと思われます。退職を考えていただけますか」といった内容になります。

このように、退職勧奨(勧告)は、会社側から社員に退職の申し出をするよう誘うことです。

これに応じて、社員が退職願を提出するなど退職の意思表示をして、会社側が了承すれば、労働契約(雇用契約)の解除となります。

退職勧奨(勧告)を受けた社員が、実際に退職の申し出をするかしないかは、本来は完全に自由なのですが、職場の慣習などにより、心理的に断り切れないこともあります。

“退職勧奨(退職勧告)に応じた意思表示の取消” の続きを読む
自己都合の転居と通勤手当の増額

自己都合の転居と通勤手当の増額

<新型コロナウイルス感染症拡大の影響>

コロナの影響で、感染者の多い地域から少ない地域へ転居する動きが見られました。

ほとんどの場合、会社からの指示ではなく自己都合での転居です。

また、在宅勤務が定着してくると、会社の近くにある家賃の高い物件に住むよりは、会社から離れた家賃の安い物件に住むことを考える従業員も増えてきます。

こうした場合、自己都合で転居した従業員の通勤手当が、大幅に増額されることは防げないのでしょうか。

<就業規則の規定>

通勤手当をどのように支給するかは、労働基準法などに規定がありません。

就業規則にどう定めるかは、基本的に各企業の自由です。

「実費を支給する」というだけの規定であれば、従業員が自己都合で転居した場合でも、通勤手当が実費を基準に支給されることになり、大幅に増額されることがあるでしょう。

「月額7万円を上限として」というように、通勤手当の上限額が規定されているのであれば、これを上回る費用は個人負担となります。

「ただし、自己都合で転居したことにより通勤の費用が増加した場合には、その増加分は従業員の負担とする」という規定であれば、元の住居を基準とした通勤手当の支給となります。

“自己都合の転居と通勤手当の増額” の続きを読む
「不合理であってはならない」の意味

「不合理であってはならない」の意味

<不合理ではダメ>

パート有期労働法第8条に、「短時間・有期雇用労働者の待遇について、(正社員など)通常の労働者の待遇との間で、不合理と認められる相違を設けてはならない」という趣旨の規定があります(長いので最下部に示しておきます)。

ご存知「同一労働同一賃金」に関連した重要な条文です。

この条文は、「不合理ではダメ」と言っているのであって、「合理的でなければダメ」とは言っていないと説明されます。

日本語としては、どちらも同じ内容を表しているように思えますが、裁判では大きな違いを生じます。

<証明責任>

Aさんが、友人のBさんに、1か月後に返す約束で10万円を貸したのに、1か月経っても返してもらえません。

Aさんは、Bさんを相手に、貸金返還請求訴訟を提起します。

この訴訟でAさんは、Bさんに10万円を貸したという証明をしなければなりません。

これに失敗すると、Aさんは、この訴訟で敗訴してしまうでしょう。

このように、訴訟で証明に失敗すると不利益を被る責任を「証明責任」といいます。

もしAさんが、Bさんとの間で交わした金銭消費貸借契約書を裁判所に証拠として提出したら、今度はBさんが窮地に追い込まれます。

この訴訟でBさんは、Aさんに10万円を返済したという証明をしなければなりません。

これに失敗すると、Bさんは、この訴訟で敗訴してしまうでしょう。

返済については、Bさんが証明責任を負っていることになります。

このように証明責任を分配することによって、「裁判所がどちらを勝たせて良いのか分からず判決を下せない」という事態が発生することを防いでいるのです。

“「不合理であってはならない」の意味” の続きを読む
情報漏えいが疑われる社員への対応

情報漏えいが疑われる社員への対応

<悪ふざけ写真の拡散>

6年ほど前、アルバイト社員がSNSに悪ふざけの写真を投稿し、これが拡散されて会社に損害をもたらす事件が多発しました。

自分の友だち限定で、ウケを狙って配信したところ、その友達がコピーして一般公開してしまい、拡散されて会社が信用を失うことになったわけです。

こうした事件は、店舗で発生することが多く、お客様の信用を失って、休業や閉店などを余儀なくされることもありました。

不正な情報拡散の威力を思い知った事件でした。

<情報漏えいの問題>

店舗よりも、むしろ本部など事務部門の方が、重要な機密情報を多く保有しています。

営業上の秘密が漏洩すると、会社は直接的な打撃を受けます。

顧客の個人情報などが漏洩すると、信用が失われ、信用回復のために多額の費用を投じても、回復までの間、売上が相当に減少してしまいます。

社員の中に、こうした情報を漏洩している者がいると疑われた場合には、迅速で徹底的な対応を迫られることになります。

“情報漏えいが疑われる社員への対応” の続きを読む