「常識」を巡る社内トラブル

「常識」を巡る社内トラブル

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

<礼儀作法、マナーとしての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることがあります。

ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。

「中途採用の〇〇さんは、挨拶の仕方も知らない。常識が無い」という話を耳にすることがあります。

たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通の「常識」となっています。

しかし、挨拶の仕方については地域や業界によって「常識」が異なっていますから、転職すれば「常識」の修正が必要になります。

こうした違いについての知識が無い社員が、異なる「常識」を備えた社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることでトラブルが発生します。

また、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。

社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。

<当たり前の感覚、分別としての常識>

これが最もトラブルになりやすい「常識」です。

なぜなら、この「常識」は個人ごとに異なり、それにもかかわらず多くの人に共通するものだという勘違いがあるからです。

「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ゼネレーションギャップを端的に表した言葉です。

この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。

部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方が無いという「常識」が、パワハラの原因となります。

いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという「常識」が、セクハラの原因となります。

勤務中にマスクを外すことは許されないという「常識」が、コロナハラスメントの原因となります。

社員一人ひとりの「常識」に任せておけば、必然的にトラブルの温床となります。

安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。

社会保険労務士 柳田 恵一