<長時間労働の基準>
所轄の労働基準監督署長に届出ている三六協定の範囲内で、時間外労働や休日労働が可能です。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、法定労働時間を基準として、以下を守らなければなりません。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均がすべて1か月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月まで
以上の基準をすべて守らなければ、労働基準法違反となり罰則の適用もありえます。
<長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果>
令和3(2021)年8月20日、労働基準局監督課過重労働特別対策室室長と中央過重労働特別監督監理官の連名で、長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果が公表されました。
これは、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめたものです。
【令和2年4月から令和3年3月までの監督指導結果のポイント】
(1) 監督指導の実施事業場: 24,042 事業場 (2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場] ① 違法な時間外労働があったもの: 8,904 事業場(37.0%) うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が 月 80 時間を超えるもの: 2,982 事業場(33.5%) うち、月 100 時間を超えるもの: 1,878 事業場(21.1%) うち、月 150 時間を超えるもの: 419 事業場( 4.7%) うち、月 200 時間を超えるもの: 93 事業場( 1.0%) ② 賃金不払残業があったもの: 1,551 事業場( 6.5%) ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 4,628 事業場(19.2%) (3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場] ① 過重労働による健康障害防止措置が 不十分なため改善を指導したもの: 9,676 事業場(40.2%) ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの: 4,301 事業場(17.9%) |
<違法な時間外労働があった事業場>
時間外労働について、違法の基準が変わっていること、また、その基準が複雑であることから、違法とされる事業場が4割近くあります。
「平均」の管理については、手計算で行うことが難しく、システムに頼らざるを得ないでしょうし、給与計算の締日の中間点で警告が出るようにしておかないと、適法性を保つのは困難だと思われます。
<賃金不払残業>
かつてはブラック企業の特徴とされていた賃金不払残業が、6.5%にまで低下しています。
令和時代に入ってもなお、サービス残業がある会社では、人材の確保が難しく、また、各方面からの信頼も得られませんので、やがて事業の継続は困難となるでしょう。
社会保険労務士 柳田 恵一